私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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私たちは、税理士試験の適正化を要望します
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「NHKから守る党」加陽麻里布氏の当選無効と違憲訴訟について

5月26日投票、27日に開票が行われた東京都足立区議会議員選挙で、5,548票を獲得し、有効であれば8位当選となる候補が無効とされる珍事があった。

 東京都足立区選挙管理委員会は27日、同日開票された区議選で、政治団体「NHKから国民を守る党」から出馬した女性候補に被選挙権がないことが分かり、公職選挙法に基づき、投票を無効にしたと発表した。区内に3カ月以上住んでおらず、住所要件を満たしていなかった。

 この候補は加陽麻里布氏(26)。区選管によると、加陽氏は区内のカプセルホテルの住所を届け出ていた。区に住民票も置いていなかったため選管が調査していた。
 区議選には57人が立候補し、45人が当選。加陽氏は5548票を獲得し、投票が無効でなければ8位で当選していた。


「NHKから守る党」候補、投票無効=住所要件満たさず-東京都足立区議選:時事ドットコム

人物

候補は、若干26歳の女性、加陽麻里布(かよう まりの)氏。サバサバ系の美人(?)である。投資用マンションを売る不動産営業の仕事をしていたが、司法書士試験を受験・合格、2018年8月、司法書士として独立開業(事務所登録は永田町)し、株式会社あさなぎコンサルティング(登録は江東区)を立ち上げた。


一時期話題となった「退職代行」サービスにも参入している。


傍ら、YouTuberとして動画のアップも行い、現在1万人超の登録者を得ている。この間10か月足らず。

そんな彼女がなぜ、NHK解体をシングルイシューに掲げるカルト政党である「NHKから国民を守る党」から立候補することとなったのか。加陽氏がYouTubeでN党の配っているステッカーを紹介したのがきっかけで、同じくYouTubeで動画をアップしている党代表の立花孝志氏の目に留まったようである。

www.youtube.com



加陽氏は立花氏がNHKを相手に争っている裁判の傍聴に行ったり、N党の記者会見の司会を務めたりした様子のアップを続けていたが、いつの間にか本人が区議に立候補していた。

加陽氏に被選挙権はあるのか?

加陽氏は墨田区に居住しており、足立区で立候補できる被選挙権がない。この点について彼女は、次のように主張している。

なぜ、足立区民ではない私がこの選挙に立候補できるかというと候補者になることができる要件として法は居住実態を求めていないからです。

候補者になることができる要件と当選できる要件は別なのです。当選できる要件として3ヶ月の居住要件が必要になります。これは法律の穴です。


民意か公職選挙法か、足立区区議会議員選挙 | 司法書士社長のブログ


候補者になる要件と、当選できる要件が異なる、という。本当だろうか?
公職選挙法の規定は、次の通り。

(被選挙権)
第十条 日本国民は、左の各号の区分に従い、それぞれ当該議員又は長の被選挙権を有する。
五 市町村の議会の議員についてはその選挙権を有する者で年齢満二十五年以上のもの

公職選挙法

公職選挙法10条5号は、被選挙権を有する者について、「選挙権を有すること」と「25歳以上であること(年齢要件)」の2つを求めている。選挙権については、その前の9条2項に書いてある。

(選挙権)
第九条
2 日本国民たる年齢満十八年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。

公職選挙法

これを組み合わせれば、被選挙権を有するには「3か月以上その市町村に住所を有すること(居住要件)」と「25歳以上であること(年齢要件)」が必要であることがわかる。これは条文から明らかであり、法に穴などない。どう読めば、「候補者になることができる要件として法は居住実態を求めていない」と解釈できるのか不明である。

加陽氏は無効を承知の上で立候補した

ただ、加陽氏は上記のエントリで、こうも主張している。居住要件を定めた規定そのものが、憲法22条及び憲法15条に反し無効である、との主張である。

一旦無効票とはなりますが決して死に票にはなりません。裁判をして違憲判決をとることができれば当選できます。何よりも優先されるのは民意なのか公職選挙法なのか。


民意か公職選挙法か、足立区区議会議員選挙 | 司法書士社長のブログ


法令違憲であると問うこと自体はありだろう。可能性がないわけではない。ただ、上記の「候補者になることができる要件として法は居住実態を求めていない」という主張とは全く別の論点であり、論旨が明快でないので、加陽氏が自身の主張をよく整理できていないのか、意図的に混乱させようとして書いているのか、立花氏の受け売りなのかは、よくわからない。


加陽氏は「民意VS公職選挙法」という構図を示しているが、これは誤った二分法である。いくら民意を得ようと、法律上無効のものが有効になることはない。提示するなら、「居住要件規定は違憲VS合憲」であろう。


選管はなぜ加陽氏の立候補の届出を受理したか

報道と加陽氏のブログではいまいち理解できなかったが、加陽・立花両氏が行った記者会見の動画と、足立区選管への異議申出書を見て、主張するところは理解できた。

www.youtube.com


両氏の説明するところによれば、立候補の届け出に先立つ足立区選管の「事前審査」の段階では、加陽氏の実際の住所である墨田区の住所で受理されると言われていたそうだ。都選管、総務省からは「立候補できる」と回答を得ていたとのことだ。それが届け出の当日になって選挙長から「墨田区では受理できない」と言われ、やむを得ず立花氏が足立区のカプセルホテルの住所に書き換え提出したということである。加陽氏も届出の住所に居住実体がないことは認めている。


墨田区の住所でも立候補できるという法的根拠は不明であるが、このような経緯があったらしい。選管としては、足立区の存在する住所を記載して出された以上、受理するのはやむを得ないと思われる。*1
届出というのは、文字通り届け出であって、許可主義で行うのではないから、形式的に明らかな不備(記載事項が足りないとか、読めないとか。)がない限り不受理とする権限が選管にない。全ての候補者の居住実体を届け出の時点で確認するのは不可能であり、事後的に調査をし要件を満たしていないことが判明したらその時点で遡って無効とするのは妥当な取扱いと思われる。

加陽氏は違憲訴訟を起こす予定

加陽氏は足立区選管と都選管への異議申立を経て、訴訟を提起するとのことである。*2主張の筋は、公選法10条5号の居住要件規定が、憲法22条、15条に反し無効、というものだ。「足立区長や足立区役所の職員は、足立区民でなくてもその職に就くことが出来ます。しかし、足立区議会議員だけは足立区民でなければその職に就くことが出来ないという法律には、合理的理由が存在しません。」(上記異議申出書より)という主張は、理解できないではない。
ただ、判決もおそらく予想できる。当該規定は、地域の有権者の声を政治に反映させようという地方自治の趣旨に基づくものであり、立法裁量の範囲内であるから合憲という判決になるだろう。

また加陽氏は、年齢要件が憲法14条に反している、という主張をしたいとも語っている。被選挙権を18歳か20歳に引き下げるべきであるという考えは、それ自体国政の場で検討されてもいいとは思う。しかしこれも、裁判上は加陽氏に法律上の利益がないので、主張を検討するまでもなく却下となるであろう。



公選法の規定に疑問を持つこと、違憲訴訟を通して議論を喚起したいという行動には、個人的には共感する部分もある。しかし、「NHKから国民を守る党」からの出馬、足立区議選であることが妥当であったのか、疑問は残る。加陽氏が選挙に出馬した真の理由はわからない。

*1:「無効の判断が開票当日になったことについて区選管は「届け出段階では形式的な審査しかできず、足立区の住所を書かれたら受け付けざる得ない」としている。」5548票が「無効」に 足立区議選で居住実態ない女性候補 - 産経ニュース

*2:公職選挙法207条に基づく。

追悼・牧野剛先生 牧野さんから私が与えられたもの

先日、私の恩師である「牧野剛さんを偲ぶ会」が名古屋・千種のメルパルクホールで行われた。

私の牧野さんとの出会いはコスモの入塾式。講演に登場し、最初は体調が悪そうだったのに、話が進むほどに熱く元気になっていくパワフルな牧野さんに、聞いている私も胸が熱くなり「ここに来て良かった」と、心から思ったことを想い出す。私が牧野さんから教えを受けたのは2006年の1年間だけだったが、間違いなく私の人生に影響を与えたうちの一人で、そしてこの追悼会でも私に新たな行動へのきっかけと勇気を与えてくれたのであった。


以下で紹介する2つの本の書評は、2007年と2008年に私が書いたものからの再録再編集。私の牧野さんの想い出と結びついたこの2冊からの引用を合わせて、牧野さんへの追悼文とする。

牧野基礎教養ゼミの想い出とそこで私が与えられたもの

牧野さんには、月曜日の読書会で毎回新たな世界のことを教わり、そして終わった後の8時くらいから今池あたりにご飯に連れて行ってもらい牧野さんの面白い話を聞き、生徒は1000円ずつ払って解散するのが定番だった。読書会では、牧野さんが用意した本を題材に、まず牧野さんが本文を読む。(生徒には当該場所のコピーが配られ、たまには牧野さんの代わりに生徒が読むこともあった。)そして2、3行読むたびに、牧野さんが解説を加えていくというスタイルだった。難しい言葉の解説はもちろん、生徒が知らないような背景や知識を紹介しながら、軽妙なツッコミを交えつつ進んでいった。当然、読書会の時間の中で本1冊の全部を読みきることはないが、しかし牧野さんは事前に何冊も読み込んだ上での、その本の一押しの章部分を読んでいくのだから、それはそれは濃縮された、その分野の専門家から教わっているようであった。扱う題材は、社会・歴史・教育・科学と多岐に渡り、1冊の本を何回か続けて読むこともあれば、同じテーマを扱った別の本に移っていくこともあった。


牧野剛「30年後の「大学解体」」

牧野さんは名古屋大学で、東大と京大に挟まれたこの地区の全共闘運動の指導者として活躍した。全共闘運動は「大学解体」を叫んで活動したのだけど、セクトと言って所属する党派によって内ゲバを起こしていた。それを牧野さんは「まあまあ」と言って説教してくっつけてまとめていた。その後、予備校講師になり河合塾の全国展開に大きく功労を残す。

党派に入らなければうまく行かないのだったら、自由にやらせてくれればどこでもいい。
( 中略 )
全学連をつくるんだったら党派同士の激突を回避するほうが重要だろうと思いました。
( 中略 )
ところが中央からは「何人動員するんだ」とか「党派闘争をやれ」とか、ばかなことばかり言ってくる。自分たちは全員金がないので、革マル派だけは来なかったけれども、中核派も社青同もブントも無党派も全員同じ電車で全国闘争のため東京に行くわけです。東京に着くとパラパラッと別れて、会場ではそれぞれの党派ごとに殴り合いをやらなければいけない。そして帰りもまた同じ電車で一緒に帰らなければいけない。だって団体だと安くて、半額になりますから(笑)。

牧野剛「30年後の「大学解体」」pp.27-28

芽嶋さんは「教科書不使用」や、エンタープライズ号寄港阻止闘争、佐世保闘争に生徒を連れていったということで解雇され、裁判をやって最高裁でも負けた。 ( 中略 ) 芽嶋さんは教科書不使用だけど、いつもプリントを配って授業をやっていたわけです。そのころ大学入試がどんどん変わって小論文がやられるようになりましたが、従来の科目の否定としてつくられたのですから教科書なんかやっていると小論文はできないのです。 ( 中略 ) この皮肉がどこまで行くかというと、なんと小論文の対策が高校でできなくなった福岡県教育委員会が「小論文指導の先生をよこしてくれ」と河合塾に言ってきた。それで高校を首になった芽嶋さんが指導に行ったんです(笑)。


同書 p.34

少子化でつぶれるんじゃないかと言われて、実際2010年には浜松地区は浪人生ゼロ、何とか地区もゼロとデータが出てきても、内部の8割ぐらいの人は何も変わらないだろう、われわれだけは大丈夫だろうと思っています。 ( 中略 ) それで塾側が「生徒の人数に応じて給料を減らしたい」と言うと抵抗するわけです。しかし、50代半ばの連中に、もう自分たちは給料を減らされてもいいと決意している奴が多いんです。「自分の給料を1コマ90分切れば、若い奴が2コマになる。こいつにそれを回してやってくれ」と言っている奴が僕の周辺に10人ぐらいいます。 河合塾の「自己否定」の全共闘派は、まるで企業に協力する「ワーク・シェア」みたいに見えるけれど、そうではなく、全共闘をやった以上は企業に長々といるべきではなかったし、「おれたちは流れ者だ」という意識が強い。

同書 pp.91-92

立花隆「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術」


立花隆は牧野さんとは直接関係ないのだが、この本を読んでいたときに、読書家である牧野さんの要約ゼミで学んだこととの共通点を見出した。

この本によれば、各パラグラフの頭のセンテンスを読むだけでもその本の流れが相当つかめるという。大事なことは大抵頭の数行に書いてあるからで、時間に余裕があれば加えて尻のセンテンスも読むのが良い。ところでこれはどこかで聞き覚えのある話・・・・・・その手法は牧野さんの教えに似たところがあることに気付いた。

入試問題で出る評論文を読み解くには実は、要約を作ることが最も良い方法だという教え。元の文章で重要だと思うところ数行に線を引いていく。その部分を抜き出して組み合わせ原稿用紙に起こしていく。イメージとしては元の文章の論理構造そのままに忠実な縮小版を作ること。少しでも下手な改変をすると作者のニュアンスとは変わってしまうので、接続が不自然になるところを直す以外は基本的に引用だけでいい。これをやることで本文の内容はしっかり把握できるし、入試問題で問われるような重要部分も自然とその中に絞られていることが多い。速読とは違って何度も読み込まないとできない作業なのだが、そうして作った要約は結果として、パラグラフの頭と尻のセンテンスで構成されていることが多いのだ。


本に書いてあるからといって、何でもすぐに信用するな。自分で手にとって、自分で確かめるまで、人のいうことは信じるな。この本も含めて。


立花隆「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術」p.76


そしてこの金言はまさに、牧野さんが読書会で私たちに教えていたこと。本一冊読んだくらいで、その分野のことを知ったようになるのは、甘い。その分野について、違う著者が書いた本を最低2、3冊は読んでいろいろな角度から検証してみる。そして何人かの専門家が同じ主張をしているなら、ようやく「どうやらこれは本当らしいぞ」ということが見えてくる。2006年の読書会で扱った中では、国鉄3大事件の一つ「下山事件」や、GHQに絡む「M資金」についての本を読んだとき、そのようなことを仰っていた。


これは、私の価値観、人生観にも影響を与えている。基本的に「人は的当なことを言うもの」だと思っていて、エヴィデンスのない話はあまり信用しないし、常に「私は何を知っているか?」というスタンスでいたい。まあ、最近新たに学んだことは、彼女と話す時や、仕事で上司から指示を受ける時に、こういうスタンスが根底にあると関係を悪くするということがあるのですがね(笑)。


想い出写真

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牧野さんが行きつけだったというバー「カルヴァドス」の落書き。トイレに入って見た瞬間、牧野さんっぽいな、と思って撮っておいたら、後からやはり牧野さんが残したものだったと店主から聞いた。
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牧野さんに連れきてきてもらった今池呑助飯店の名物ラーメン(油そば)。なんてことはない中華料理屋なのだが、餃子もラーメンも他とは一味違って、ここでしか食べられない味。またここに来て食べたくなる。

どうせ何も変わらないと思っている人へ

こんにちは。Markです。私はいま、怒っています。
国税庁に、ではなく、声を上げない税理士受験者に、です。
既に署名いただいた60名の皆様は行動を起こした方々なので、言う相手が違うのですが、どうしても伝えたいことがあってこれを書いています。

今の試験はやはり間違っています

先日私は、大原に来年受験する科目の相談に行ってきました。
所得税か法人税か迷っているということで、法人の先生にも試験のことについて、いろいろ伺ってきました。
その中で「今年の試験問題も酷かったそうですが」と振ってみたところ、次のような話がありました。

計算問題では前提条件がおかしく別解が多発、発表する予備校によって解答が割れている状況。
受験者以外の方に向けて説明すると、税理士試験の計算問題は基本的に事例に応じた税金の納付額がいくらになるかを求めるもので一つの答えにたどり着くはずなので、これは試験の問題として成立していないレベルなのです。

理論も「基本的な理解を問う問題をすっ飛ばして、通達レベルの細かい知識を知っているかどうかを問う問題。これから税理士になろうとする人に出す問題ではない。」
「一年間みっちり勉強をやってきて、こんな問題を出されて可哀想だ」とも仰っていました。

試験委員の当たりはずれによって、受かるかどうかが左右されるのはおかしい。
(といっても合格者がいなくなるわけではありませんから、本当に受かるべき実力がある人が落とされて、そうでない人が受かる、可能性があるということです。)
こんな試験は間違っています。


声を上げなければ絶対に変わりませんよ

受験者の間で、おかしな問題が出されることは半ば常識化しており、予備校の講師でさえも頭を抱える。
でも、こういう状況が何年も続いていながら今まで何も変わりませんでした。なぜでしょうか?

声を上げて伝え、抗議しなければ、絶対に変わりません。
どれだけ悔しい思いをして身近な人に話そうが、罵詈雑言を2ちゃんねるに書こうが、伝えたことにはなりませんよ。国の公式見解的には全くなかったことになっています。


だって自分が国税庁の役人だったら、と考えてみてください。
60年間ずっとこのやり方(問題の作成は試験委員に全権委任し、国税庁はタッチしない形式)で来たのだから、特に問題がなければ変える必要がありません。
変えて何か問題が起きて責任を問われることを役人は嫌いますから。
特に今私が要望している、模範解答の発表等は、国からしたら確実に仕事が増えることになりますから、変えざるを得ない状況にならなければ自主的に変えることはないでしょう。


変わらないのは私たちが何もしなかったからです。今あるものを変えるためには、問題にしなければならないのです。

実際に変わった事例

今やっているキャンペーンに比べて遥かに小さなことですし、ほとんどの人は気づいてもいないでしょうが、税理士試験の受験案内にある電卓の規定が私の投書をきっかけに変わりました。

que-sais-je.hatenablog.com


私が国税審議会に手紙を送った次の年に変わりました。
その手紙には、当該の規定について明文化する必要性の説明や、参考として他の試験での事例等の情報もつけて送りました。
別に私の手柄だと見せびらかしたいわけではありません。たまたまタイミングが重なっただけかもしれません。
ただ、役所というのは、然るべきルートで働きかければ割とちゃんと対応します。

成功の鍵は皆様が握っています

今回、税理士試験適正化の要望を出すのに、このような署名活動・キャンペーンの形をとっているのも、一番効果的な成果を得るためです。
当初から開示請求は私一人でもやるつもりでしたが、一人でひっそりやっても誰にも知られず終わる可能性があります。
(今までにも声を上げた人がいても国税審議会に無視されていたという可能性も無くはないです。)
法律に基づく開示請求に対し、国は何らかの決定を出さなければいけませんが、その時に世間の注目が集まっているのといないのとではかかる圧力が違います。


私は、このキャンペーンについて、税理士受験関係以外の友人にも伝え、賛同をお願いしています。
税理士試験とは全く縁のなかった方たちが、理解し、協力してくれています。
肝心の税理士受験者が、諦めて冷ややかでいて、どうするのですか。


まだこのキャンペーンは、この先1ヶ月、2ヶ月かかります。
成功するか否かは、今後皆様一人一人が関心を持ち続けられるかどうかにかかっています。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。

このキャンペーンに関する問合せ

本件に関して連絡がとりたい場合は、以下のblog又はメールアドレスまでお願いします。
このメッセージに対する感想、意見、提案、あなたの周りの反応などもお待ちしています。

http://que-sais-je.hatenablog.com/
mark.temperアットマークgmail.com


www.change.org

このキャンペーンで訴えていること「私たちは、税理士試験の適正化を要望します」

www.change.org


こんにちは。Markです。
賛同者は徐々に増えています。皆様ありがとうございます。

しかしながら、一部に「条件は皆同じだから公平だ」「一定数の合格者は出るのだから受かるようにやるしかない」という意見も見受けられます。
この方たちには、こう言いたい。
合格レベルに食い込める人たちは皆十分に努力をし、一定のレベルに達しています。
十分な実力のある受験者の中で合否を決めるのに、運の要素が大きくなり過ぎていることが問題なのです。

このキャンペーンで訴えていること

運が悪かった、で済まされない問題です。
特に税理士試験は長期化しがちです。合格が一年伸びることによる精神的・経済的負担は大きいです。
仕事や結婚など人生計画に影響します。真剣に試験に臨んでいる受験者ほど、納得して頂けるのではないでしょうか。

私は、このキャンペーンで、試験の難易度も、合格者の数も、その他の試験制度について論じることもひとまず置いています。
ただ、とにかく「模範解答と点数だけでも公表するようにして欲しい」。
そうすれば、合格基準に対する透明性が高まり、不適切な問題は自然に排除されるようになります。
真剣に臨んでいる受験者にとってはメリットしかないはずです。



私が友人にこのキャンペーンの話をしたところ、「介護福祉士や鍼灸師の国家試験でも以前は不適切な問題があったが、専門学校等が働きかけ、公表・訂正されるようになった」と応援してもらいました。
また私の主治医も、「医師国家試験にも私が受けた頃は問題があったが、今は変わってきた」と言っていました。
税理士試験は遅れています。今が変えるときです。

今後の予定

模範解答及び採点基準の開示請求は9月中に実行しようと計画しています。
それまでに、100人の賛同者を集めたいです。
(この100人という数字に特に理由はありませんし、このサイトでページを作ったら自動的に設定されたものですが、多数の声があることを示すために大台に乗せたいと考えています。)

このキャンペーンの署名に、いち早くご協力いただいた皆様は、特に熱意のある方だと思っています。
そんな皆様方の中で、以下の提案にご協力いただける方を募集します。

不適切問題の具体例を募集します

この企画を成功させるためには、今の税理士試験にいかに問題があるかということを説得力を持って説明しなければなりません。
これからそれをまとめたページを作成しようと考えています。
「何年(○回)」の「○○税法」の「問○の記述」について、
・解答が不可能なほど重大な欠陥のある問題。
 (例:一つの問の中で前提が矛盾している。考えられる解答が2以上ある。)
・解答は可能だが、時間内に判断するのが困難で適切でない問題
 (例:解答欄が狭すぎる。無駄な記述の要求が多く出題意図が不明。)
等の客観的、具体的な指摘を行います。

私は、これまで簿・財・相・酒の受験経験があります。
相続についてはこれから私が書こうと思っていますが、それ以外の科目については、十分な知識のある方が書いた方が適切です。
もう少し詳しい説明をこれからblogに書きますので、ご協力いただける方は下記のメールアドレスまでご連絡ください。


予備校への連帯の呼びかけ

大原、TAC等の受験予備校がありますが、これらが不適切な問題について出題意図や訂正の申し入れをするべきだったと思います。
(私が知らないだけで、過去にそのような動きはあったのかもしれませんが。)
大手予備校同士で発表する解答が割れるような状況では信頼を失い、これが続くことで税理士試験受験者が減っていくような状況は、これらの予備校にとっても不利益となるでしょう。
「本試験では理不尽な問題が出ますから」とその対策を教えるのではなく、積極的に適切な問題となるよう働きかけ、授業で教えたことに受験生が成果を発揮して合格できるようになることが、これらの予備校にとっても利益になると考えます。

皆様の中で、懇意にしている先生がいる方は、是非この署名サイトのプリントを見せて意見を聞いてみて頂けないでしょうか
公式になんらかのコメントを出して頂いたり、そこまでいかなくてもこの企画を紹介してもらえるような、協力体制を築ければ完璧です。


このキャンペーンに関する問合せ

本件に関して連絡がとりたい場合は、以下のblog又はメールアドレスまでお願いします。

http://que-sais-je.hatenablog.com/
mark.temperアットマークgmail.com

「私たちは、税理士試験の適正化を要望します」change.orgで署名活動を始めました

change.orgで署名活動を始めました。

キャンペーン · 「私たちは、税理士試験の適正化を要望します」国税庁 国税審議会へ開示請求を · Change.org
短縮URL https://goo.gl/zxBiC7

メッセージ

こんにちは。発起人のMarkと申します。(今はハンドルネームでお許しください。)
change.orgで企画を立ち上げ、最初の24時間で12人の方に署名していただけました。
まずは、ご賛同いただきました皆様、ありがとうございます。


ただこの企画については、受験者の中にも、実際に解答不能レベルの酷い問題に当たった人とそうでない人の間で感じ方に温度差があるようです。
しかし以下に紹介する掲示板の書き込みを見て、これは必ずやらなければと決心しました。

国税庁への開示請求は私の責任で行います。
ただし、「この試験の体制を改善して欲しい」と、私だけでなく多くの方が同じ思いを持っているということを示す必要があります。
過激なことを言う一人の血迷った受験者の戯言でなく、多くの人がこの件に注目しているとなれば、国税庁も決して無視できないはずです。

税理士試験は非常識的なことが多くありますが、長年それが当たり前とされてきたため、皆、声を上げることを忘れてしまったようです。
多くの人がおかしいと思っていながら、公式的にはなかったことにされています。
昔はそれで許されたかもしれませんが、他の国家試験などでも情報公開・透明化が進んでいます。

記述試験での完璧な採点は難しいことだと理解しています。
「完全に運の要素をなくし、公正公平にしろ!」と無理難題を言っているわけではありません。
しかし、仕組みで排除できる明らかな不備はなくし、改善できるものは改善するべきだと思います。
国税庁から模範解答が発表されるようになって困る人は、受験者の中に誰もいないと思います。
問合せに対応しなければいけない国税庁は負担が増えるかもしれませんが、資格試験を実施する以上、本来行ってしかるべきことです。



署名サイトに、ご自身の経験をコメントして頂いたり、SNSなどで紹介いただくのも大きな助けになります。
どうか周りの方にこの企画をお伝えいただき、一人でも多くの方に賛同いただけるようご協力をお願いいたします。

謝辞

この企画の立ち上げの後押しとなった掲示板の書き込みを紹介します。


920 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail:sage 投稿日:2016/08/19(金) 07:43:22.80 id:cHHkto1M0
>>918
そんな言葉で片付けていいレベルの不備じゃない
今年の法人税の計算見たのか?
ほとんど資料不足、不備で解答不能もしくは別解出てんだぞ
知らないやつからしたら自分に甘えてるように映るかもしれないけど
あんな非現代的なものは正しとかなきゃいけないんだよ



933 1 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail:sage 投稿日:2016/08/19(金) 09:27:06.70 ID:9+g8lVx70
>>931
じゃあほとんど不備しかない問題もこのままでいいわやっぱり

減価償却開始した年が1年ズレてて、
それにつられて寄付金も解答不能で、
いつ発生したのかわからず貸倒引当金に解答が2つある、
会社上の処理の資料が抜けてるから繰延ヘッジか時価ヘッジかわからなくて、
会社上の貸倒引当金が借方表示か貸方表示かわからないから配当金の計算にも解答が2つあって、
まともに解けるところは受験生なら誰でも取れるようなところだけでも試験委員だけ正しい答え知ってればいいわ

運がいい人が受かればいいもんな


934 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail: 投稿日:2016/08/19(金) 09:28:05.30 id:D7U7L0hj0
不備を認めて迅速な対応が出来ない国税庁の体質に問題が
あるんじゃまいか?
国税の徴収だけには力入れてそうだけど...


937 1 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail:sage 投稿日:2016/08/19(金) 09:43:40.40 ID:9+g8lVx70
別に自分が出来なかったから悔しくて八つ当たりしてるわけじゃないからな
採点をブラックボックスにしないっていう当たり前のことを当たり前にさせたいだけだからな


940 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail:sage 投稿日:2016/08/19(金) 10:27:56.38 ID:9+g8lVx70
>>939
いいや違うな
寄付金を寄付金と見抜けなかった者
貸倒引当金、ヘッジ、配当金をえーいこっちに掛ける!で試験委員の考えと一致した者
そういう人が点を取る試験になってんだよ
取捨選択とか言ってるのはまんま簿財の考え方だな
取捨選択なんてする余地もないんだよ問題が数個しかないんだから
臨機応変に対応できたやつがいるのか今回の試験で
法人税受験生でそれができたやつは教えてくれ

俺は一応ボーダー超えてるから落ちた人の僻みみたいに言われるのは違うわ
予備校ごとに解答も全然違うからどれかの予備校で確実圏にいる人でも落ちる可能性は高い
理論はまだまともだけどそれでも予備校ごとに解答が全然違うからな


948 1 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail: 投稿日:2016/08/19(金) 11:52:48.61 id:GIPXpti10
永橋一期生で今、開業税理士だけど、あの時は命がけで挑んだだけに、試験後しばらくは茫然自失だったよ。

次の日には、今回は落ちても俺の責任じゃないな、と開き直ったけど。

あの問題に対応できるよう訓練するとか、税理士の能力とは全く関係ないし、試験制度そのものを破壊してる。

普通なら1年目で辞任するけど、恥の概念がないんだろうな、永橋には。永橋が書いた実務書何冊か読んだけど、本当に間違いだらけだよ。

永橋を推薦した上西先生も同罪。近畿税理士会はもう税理士試験に関わらない方がイイわ。



951 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail:sage 投稿日:2016/08/19(金) 12:27:58.06 ID:9+g8lVx70
AですかBですかと聞かれて資料足りないから答えようもないのに試験委員がBと思うからBなんていう試験のままでいいのかよ
感情的な言葉で悪いけど、
作問者側も受験生側も問題になった時に変えようとしないでヘラヘラしてまあしゃあないよねっていう姿勢本当に嫌いだわ


967 1 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail:sage 投稿日:2016/08/19(金) 13:51:50.48 id:LvDxCRGh0
ここ見てたらわかるけど
実際に受けた人と受けてない人には温度差があるわな
受けた人からするとあんな問題でいいわけないだろ、何見なかったふりしようとしてんだこいつらって感じだし
受けてない人からすると甘えてるようにしか見えんのやろうな


969 名前:一般に公正妥当と認められた名無しさん Mail:sage 投稿日:2016/08/19(金) 14:05:42.11 ID:9+g8lVx70
>>963
なぜそのひどかった時に正そうという話にならなかったのか
俺が試験続けるかやめるかは今の話には関係ないだろ
間違っているものは正すだけ

強いて言うなら俺は試験続けるしやめるなんて一言も言ってない
試験受ける受けない関係なく間違っているものは間違っている
俺が税理士になった後にまだこんな問題出されてたらその時にも言う
なぜならほぼ資料不足で解きようがない試験問題は間違っているから

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国税庁が税理士試験の模範解答を速やかに公表すべき理由

目次


今年の税理士試験が8月9日〜11日の日程で行われました。税理士試験は全11科目が実施され、会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)の2科目と、税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)のうち受験者の選択する3科目に合格すると、税理士登録する資格を得られます。


科目合格制をとっていることもあり、1科目ずつ挑戦していけることがメリットとして言われますが、そのことが逆に1科目のハードルをとても高くしており、5科目合格までの年数を長期化しています。「合格基準点は各科目とも満点の60パ-セント」と公式には言われていますが、科目による若干の違いはあるものの、大体合格率が10〜15%の範囲に収まるように配点が調整されていると言われていて、実質的には競争試験です。受験者総数の内、5科目合格に至る人の割合は、過去15年、2%±0.3%の範囲で安定しています。*1

5科目取得までには、相当に優秀な人が受験に専念してでも2、3年、働きながら1科目ずつ受験していく人では10年以上かかる人も珍しくありません。以前に東京税理士会の実施した調査で、平均で8.6年というデータを見たことがあります。(元のデータを探したのですが、見つけられませんでした。)



この記事は、税理士試験の非常識さを世間に知って頂き、賛否を問うことも目的としています。私は、税理士試験は随分と頭のおかしな試験だと思っていて、その理由を上げて言ったら切りがないのですが、今回は、税理士試験が模範解答を公表しないため生じている弊害について論じることに絞って書いていこうと思います。

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税理士試験の模範解答を速やかに公表すべき理由

税理士試験は合格発表までの期間が長い

税理士試験は毎年8月第1週か2週目の火・水・木曜日に行われます(昨年は異例の3週目でした。)。そして合格発表は12月(今年は16日)に行われます。この間、実に4カ月。なぜこんなにかかるのかと言えば、税理士試験は全ての答案用紙が手書きのため、採点に時間がかかるから、というのは理解に難くはないです。一説には採点後に合格者を一定の範囲に調整するため得点調整がされていると、実しやかに言われています。

解答用紙はA3用紙で、これも年・科目により大きく異なるのですが、今年の相続税法は理論6枚、計算13枚でした。ちなみに、私は今年、相続税法を受験しました。(詳しくは、別の記事で書こうと思っています。)受験者数は平成27年度(第65回)で3,895人。*223年度は4,134人。この枚数を、理論、計算それぞれ一人の試験委員が全て採点していると言われています。一番受験者の多い簿記論では、27年度15,783人、23年度23,871人です。



大抵の人はその年の受験が終わっても次の科目があるので、自己採点をしながら、新しい科目に行くべきかどうしようか悩みます。12月に発表があってから、翌年の8月に向けて勉強を始めても法人税法などの学習量の多い科目では到底間に合わないからです。最低でも週15時間から30時間程度の勉強を1年間続けてやっと問題が全部解けるようになるかどうかです。(そこから合格を確実にしようと思うとさらにハードルがあります。)
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税理士試験は合格予想が難しい

そこで、各受験予備校が試験後に発表する解答速報を基に自己採点と合格予想をします。受験予備校は5、6社ありますが、主要なところを2つ貼ってみます。


私ももちろん自己採点をしてみました。大原基準だとボーダー-3、TAC基準だとボーダー+5、でした。なぜこんなに違いが出るのかというと、本試験で自分がどう解答したか正確に覚えていないから、ではありません。(わずか数点の差が「こんなに?」と思われるかもしれませんが、上位30~40%の人は基本的にかなりできる人で、予備校の模試などの結果を見ても、合格点付近には1点の差で数百人がひしめいていることを考えるとかなりの差です。)解答はほぼ完全に再現できていても(ケアレスミスがある可能性は排除できませんが)、合格予想にバラツキが出るのには次のような理由があるからです。

  1. 解答自体が一意に定まらない
  2. 配点が一切わからない
  3. 合格点が受験者の出来に左右される


1の「解答自体が一意に定まらない」は、出題者の意図、条文の解釈によって解答の範囲が変わってくるからです。専門的な話になりますが、今年の相続税法の第1問、問1(2)の債務の意義を答えさせる問題は、法14条1項、2項の解答を要求しているのか、3項(所得税法の国外転出課税の特例)も含まれるのか、私は法13条3項(控除が認められない債務)も含むと考えたのですが、予備校の模範解答でも意見が割れています。これは、合格発表に至っても、どう点が振られるのか、出題者の意図以外の範囲を書くと減点されるのか、最後まで闇の中なのです。点をつけるのが難しい論述(理論)はともかく、計算ではそんなことはないだろうと思うでしょうか。計算においても、例えば今年出題された、取引相場のない株式で純資産価額を算定する際の保険差益に対する法人税等相当額を計算する際に、弔慰金の金額を控除するのかという点で、両方考えられるのです。2ちゃんねるの相続税法スレッドでも議論になっていましたが、予備校の模範解答でも6社あって3対3に分かれていました。

2の「配点が一切わからない」は、そもそもどう点が付けられているのか全く公表されていません。過去60年に渡って採点基準が公表されたこともないので、ここの計算欄は埋めても点がない、いや埋めるべきだ、空欄だと減点される、そんな議論もあります。1分1秒を争う試験なので、少しでも必要のない箇所は削って時間を確保するテクニックが要求されるのです。上記1で上げた例でも、出題者の考えではどちらかが正解なのか、どちらも正解になるのか、あるいはここには全く点がないのか、わからないのです。

3の「合格点が受験者の出来に左右される」。最初に書いた通り、競争試験なので、ここまでできたら合格というラインはないのです。自分が上位10%に入れるかどうか、それで決まります。だから周りの出来は非常に気になります。予備校の合格予想も結局、予想に次ぐ予想の上に作られていますから、気休めでしかないのです。



上記の通り、合格発表までの期間が4か月と長いせいと、合格予想ができないため、受験者の精神的・経済的負担はかなりのものです。受験後に「今年は受かった」と自信を持って言える人は、まず聞いたことがありません。みんな落ちたかもしれないと思いながら、新しい科目の勉強を始めたり、学力を維持するため問題演習を繰り返したりして4か月を過ごしています。せめて試験実施後速やかに模範解答が公表されれば、上記の悩みは大部分解消されます。

税理士試験は受験者の点数が公表されない

税理士試験は、結果発表においても点数が発表されません。合格の場合は「合」、不合格の場合はA~Dのおおまかなレベルで、通知書に記載されているだけです。

que-sais-je.hatenablog.com


問い合わせや抗議も一切受け付けていません。理論で何点、計算で何点とか、どこができなかったとか、そういうのも含めて一切わからないのです。採点がおかしくて間違いにされていてもわかりませんし、抗議のしようもないのです。税理士受験業界では常識となっていて、試験委員に採点を間違われないよう、丁寧に解答を作成しましょうと指導されていますが、こんな不透明、不明朗なことがあるでしょうか?


司法試験、公認会計士試験では、点数と順位まで公表され、その後の就職に大いに影響してくるのとは対照的です。

税理士試験は近年明らかな悪問の出題が続いている

今までに挙げてきたことは、全く酷いことだと思いますが、百歩譲ってしょうがないことだとしましょう。しかしながら、どうしても看過できないことがあります。問題に明らかな不備があることです。特に平成26年からの法人税の試験委員の出題は酷いということで、専用のWikiができていますから、そちらから一部を引用してみましょう。

概要:
・示談金の支払、20年間とか言いつつ期間を数えたら19年間
・ガス計器設定誤り発見日、平成26年6月1日を平成25年6月1日と記載
・S/Sが虫食い、推定すべきかどうか不明
・各回答欄に調整項目名求めて別表4にも同じ記載を要求
・H18年に廃止になった「資本積立金」が問題に掲載
・回答欄が狭すぎて書き損じたら終了
・決算確定してるのに科目振替させる
・S/Sの前期末の利準、特準、繰越利益の合計を五(一)の繰越損益金に記載



関係各所の反応:動画の様子:

大原
少々疲れ困惑した表情の講師が最後に胸の辺りにやった手を下におろし「みなさんも(溜飲を)下げたいでしょう」。

ネットスクール
「困りましたねえ」「(問題で)何を聞きたいのか分からない」

TAC
「私が講師をしている中で過去最高の難易度でした」


平成26年度税理士試験の法人税法が酷い

・難しかったというよりも、本当に混乱した。今までの解答用紙と形式も違うし、質問の意図を読み解くので精一杯だった。正直言って自信がない。(30代半ば・女性)
・現預金、売掛債権の期末精算に関しては当てられた気がするが、交際費の損金不算入額の計算だったかな、あれは出来なかったと思う。何処となく理不尽さを感じた。(40代前半・男性)


税理士試験で大混乱?!簿記論と法人税の悲劇 | 税理士、公認会計士、会計業界のトピックスならカイケイ・ファン


法人税法を学んだ人でないと何のことやらわからないでしょうが(私も全部は理解できてないです)、設問の中で問題の根幹に関わる記載で他と矛盾がある、解答用紙に無駄な記入をさせる箇所が多く本来問われるべき論点を解く時間が確保できない、ということです。一年間、あらゆることを我慢して、時間を削って、お金もかけて学校に通って、万全を期して試験に臨んだ受験者に、出された問題がこれで納得できるでしょうか?

合格のために同じくらい努力を重ねてきた人の中で、最後の部分で得意な問題が出るかどうかという運の要素が排除できないことは仕方がないと思います。しかし、これは次元が違います。考えられる選択肢の中で、試験委員の頭の中にあったであろう、根拠が不明瞭な答えをたまたま書くことができた運のよかった人は、努力の部分をひっくり返すくらいの得点を得て合格できるというのでは、何を信じて勉強したらいいのかわかりません。



こんな問題は、大学受験業界だったら大手の予備校が大学に抗議して、大学から訂正が出るレベルです。これらの明らかな不備は、試験実施前に、一度問題作成者とは別の人が解いてみれば一発でおかしいとわかることです。それすらも行っていない、あるいは問題ないと主催者である国税審議会は考えているということです。このような不備のある問題が毎年続いていて改善されていない。今年も法人税と消費税の問題が酷かったと聞いています。果たして「税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的」とする試験として適切だと言えるのでしょうか?

このような問題が見過ごされているのも、試験委員の考える模範解答が発表されていない、採点の基準も公表されていない、という閉鎖的で不明朗な税理士試験の体制から来ています。仕組みで改善できる不備です。模範解答の公表が義務付けられ外部からチェックされるようになれば、このような悪問を出題することはできなくなるはずです。


税理士試験受験者は減少の一途

上記の理由もあってか、税理士試験の受験者数は、2005(平成17)年の56,314人から、2015(平成27)年の38,175人まで減少の一途。10年で3分の1減りました。日本の人口減、少子化を考量しても、それを上回るハイペースで減っています。ITの発展による業界構造の変化等もあるでしょうが、それだけで説明できるでしょうか?

税理士試験で5科目取得するのに時間をかけることが、明らかに割に合わないことが周知されてきているからです。


Googleで「税理士」を検索すると、アドワーズの広告を除き、国税庁の試験情報、TACのサイトに続き、3番目に税理士廣升健生氏の「それでも税理士めざしますか?」という記事が出てきます。「税理士試験は、資格取得に時間がかかり過ぎる」「税理士は圧倒的な斜陽産業」と書いてあるページを見て、まともな人は、新たに税理士試験に参入しようという気を起こさないでしょう。

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優秀な成り手が税理士という選択を取らなくなっていることに、日税連、国税庁は危機感を持つべきです。ここ1年ほどの間にFinTechという言葉が広まり、会計事務所の単純な入力作業は自動化によりどんどん削減される見込みです。来年の受験者はもっと減るでしょう。

税理士試験の形骸化

税理士登録者の内、税理士試験に5科目合格して税理士になった人の割合は、実は半分に満ちていません。45.9%です。*3これでも、昭和30年の5%から60年かけて徐々に増えてきたところです。では他の税理士はどうやってなったかというと、23年以上税務署に勤務し指定研修を受けた国税職員、弁護士・公認会計士の資格で税理士登録した者、(一部)科目免除を受けて5科目に到達した者等です。

昭和26年に税理士法が制定されたときに、一定の資格者数を確保するため政策的に、既存の国家資格者である弁護士及び公認会計士を税理士の有資格者としました*4。公認会計士は税理士資格が無試験で付与されるので、近年、公認会計士で税理士登録している者は増えてきて6%を超えるようになってきていましたが、税法の知識を十分有していない者もおり、税理士会が長年法改正を訴えていました。平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者については、税理士試験税法の試験と同程度の試験に合格した公認会計士にのみ税理士資格を付与することとなりました。


一方、伸びてきているのが、試験免除者(大学院で修士号を取得し、論文の研究認定を受ける)の割合で、平成6年の16.7%から平成26年は37.2%となっています。*5あまりに税理士試験が理不尽な試験なので、大学院で科目免除を得た方が賢いと考える人が増えています。私の周りでも「200万円払って大学院に行った方が得だよ」と言う人は珍しくありません。


このような傾向の元では、税理士試験はますます軽視され、形骸化していくでしょう(質も下がるでしょう)が、これでいいのでしょうか?日税連は、会計士の税法研修に口を出すのもいいですが、「税理士試験の適正化」こそ真っ先に行うべしと考えます。

税理士試験を努力が報われる試験に

税理士試験がきちんと努力の成果が報われる試験であって欲しいと願います。今のように、合格のために多大な努力が必要な上、運の要素が大きすぎて、努力の成果が適切に結果に反映されないのでは、長年のうちに疲弊して脱落していきます。

税理士試験の実施後速やかに模範解答が公表されるようになれば、それだけで次年度に向けた計画も立てやすくなります。受験者の精神的・経済的負担は相当軽減されます。透明性が確保され、仮に不合格であったとしても結果に納得がいくというものです。できれば採点基準、配点も公表されるべきですが、最低限として模範解答だけでも公表されるのが本来の姿ではないでしょうか。


国税庁に対し開示請求を行います

以上、模範解答を速やかに公表すべき理由を書いてきました。国税庁がこれらの公開を自主的に行わないのであれば、今後、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき、模範解答と採点基準の開示請求、及び、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、私の提出した解答用紙及び詳細な点数の開示を請求する予定でいます。


実は平成15年に、税理士試験の模範解答と採点基準の開示請求を行った者に対し、国税庁がこれらの文書の不存在を理由に請求を却下した事例があります。
これについての対策も含めた、これから行う開示請求の詳細については、次回以降の記事に続きます。

*1:税理士試験 - Wikipedia

*2:平成27年度(第65回)税理士試験結果|税理士試験情報|国税庁

*3:回答者32,747 人中15,035 人 日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査報告書」平成26年

*4:東京税理士会「税理士の資格取得制度及び試験制度に関する意見」平成18年6月

*5:日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査報告書」平成26年

名古屋〜豊橋・浜松 割引きっぷまとめ 2016年最新版

以前に名古屋〜豊橋のJR・名鉄割引きっぷまとめを作成した。その後2014年4月に消費税率改正があり、運賃の値上げも行われたので以前のものは使えなくなっていた。最近、個人的な事情で定期的に浜松へ出かけるようにもなったので、名古屋(金山)から豊橋、さらに浜松まで加えた2016年最新版をここに掲載する。


que-sais-je.hatenablog.com

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名古屋〜豊橋・浜松 正規運賃

近い様で遠い浜松。新幹線「ひかり」なら名古屋から30分。JR快速列車(豊橋〜浜松間は普通)で早ければ90分。但しいずれも本数は限られており、浜松に停まる「ひかり」は毎時1本しかないので丁度良い時間に出られなければもう少し時間を要する。また、名古屋駅まで、一旦逆方向の電車で出る場合は、接続によっては豊橋までJR・名鉄で出て「こだま」に乗り継いだ方が時間も早く、金額的にもはるかに安く行ける場合がある。
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名鉄の快速特急・特急にはJRの指定席車に相当する特別車が連結されている。特別車両券(ミューチケット)は、1乗車360円。(一般車に乗車すれば不要。)


名古屋〜豊橋・浜松 割引きっぷ

普通に駅で名古屋〜浜松の乗車券を買う場合でも、競合区間は割安な特定運賃を採用している関係で、豊橋で切って乗車券を買った方が安くなる。さらに企画乗車券(割引きっぷ)を組み合わせて買うともっと安くなる。

名古屋〜豊橋は、名鉄の「なごや特割2」(土休日用)を使うと1乗車1,110円が、なんと770円まで安くなる。名古屋駅の券売機で当日買うことができ、往復680円も安くなるのだから使わないと損だ。但しなぜか有効期間が、発売月の翌月1日までと変則的なため、最長で1か月使えるが、月末日だと最短の当日しか使えない。平日用は1乗車当たり100円高い。土休日用は土休日しか使えないが、平日用は土休日も使える。

割引きっぷを使う場合の注意点は、普通の乗車券と違い、乗車変更等の条件に制約があるので事前によく確認しておきたい。例えば、「豊橋往復きっぷ」で岐阜まで乗り越した場合は、名古屋〜岐阜の別途精算(打切計算)とはならず、「豊橋往復きっぷ」の全区間が無効となり、豊橋〜岐阜の正規運賃を払わなくてはならない(発駅計算)。この場合でも、事前に名古屋〜岐阜の普通乗車券又は回数乗車券を購入しておけば、連続乗車することができる。

有効期間内にこれらのきっぷを所定回数分使い切る予定であれば是非利用したい。しかし、有効期間を超えて無効にしてしまったり、無くしたりする心配があれば、乗車当日に、金券ショップでこれらのきっぷを買うのがおすすめだ。特に浜松駅の新幹線口を出たところには数軒の金券ショップと自販機が並んでおり、普通に買うより安く買うことができる。


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