私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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私たちは、税理士試験の適正化を要望します
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税理士試験で使える電卓の規定が改定!私の指摘を反映か

今年の税理士試験受験案内の配布が17日から始まっていたようです。まだ私は実物は受け取っていないのですが、国税庁のサイトで公開されています。

試験で使用できる用具について書いた箇所を真っ先に見ました。恐らく今年はここが改定されているだろうと踏んでいたからです。

昨年の税理士試験終了直後にこのような記事を書きました。カシオ製電卓が備えている「検算機能」について、私は試験でも問題ないだろうと考えていたのですが、正式に問い合わせた結果、これは禁止されている機能にあたるとの返答でした。


しかしこれは、私には腑に落ちない返答であったため、上記記事の内容を基に、その後、税理士試験を主催する国税審議会に宛てて、「税理士試験で使用が可能な電卓について(要望)」と題した1200字ほどの文章を書いて投書しておきました。これをまともに読んで頂ければ、何らかの反応はあるだろうと思い、一年楽しみに待っていたのです。

検算機能の使用が公式に解禁

その結果、平成26年度(第64回)税理士試験受験案内には、以下のように記載があることがわかりました。

演算機能のみを有するもの(紙に記録する機能、計算過程を遡って確認できる機能※、プログラムの入力機能等を有するものは使用できません。ただし、消費税の税込み・税抜き計算機能のみを有しているものは使用できます。)

※「計算過程を遡って確認できる機能」とは、例えば、本人が入力した計算式や計算過程を記憶し、遡って画面上で計算式や計算過程を確認できる機能をいい、計算結果(答)のみを確認する機能(アンサーチェック(検算)機能(1回前の計算結果と答えを自動的に照合できる機能))はこれに該当しません。

「計算結果(答)のみを確認する機能」の後のかっこ書きが去年までの規定にはなかったものです。

というわけで、シャープ社製「アンサーチェック機能」、カシオ社製「検算機能」を備えた計算機について、税理士試験で使用できるものであることが言明されました。

これで、普段使っている電卓が検算機能付きであるため、税理士試験で使っていいものか躊躇されていた方も、安心して使い慣れた電卓を使うことが出来るようになりました。

万が一、私の投書がきっかけで、使えない方向に言明されたらどうしようかと思っていたのですが、良かったです。(笑)


ストップウォッチも可!

去年の試験で、ストップウォッチの使用を試験官に注意された者がいたという話も前の記事に書きましたが、今回、ストップウォッチの使用も合わせて言明されました。良かったですね。

試験中は、受験票、筆記具、計算器具(そろばん又は計算機)、定規、ホチキス及び時計(ストップウォッチも可)以外(例えば、法規集、下敷、耳栓、タオル、扇子等)は、机上及び机の中に置かずに、全てかばん等の中にしまい、足元に置いてください。

サントリー山崎蒸溜所でウイスキーを堪能

先月、サントリーの山崎蒸溜所を見学してきた。シングルモルトウイスキー「山崎」で有名な山崎蒸溜所は、京都と大阪の境目付近に位置し、JR山崎駅、阪急大山崎駅からいずれも徒歩10分程とアクセス至便な場所にある。JR東海道本線のすぐ脇にあり、新幹線からも工場が見える。こちらの蒸溜所では随時見学を受け付けているが、もちろん試飲も出来て、セミナーもあって、さらにカウンターバーで好きなウイスキーを試せて、お土産までもらえてと、とても素晴らしいところだったのでお伝えしたい。

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橋下徹を叩いている人の中で政策を具体的に批判できる人が何人いるのでしょうか?

さて、私もやらなければいけないことがたくさんあるので、ムキになって全レスすることもないのですが、書きかけた話題なのでもう少し続けます。私自身、政治や大阪の事情に特別詳しいわけでもないし、橋下徹は素晴らしい政治家だ、と賞賛するほどの自信は持ち合わせていないのです。ただこんな記事を書くくらいですから彼に注目していて、彼の改革(彼の言うところの「維新」)が成功して欲しいと思っています。ところが、彼の評判について調べてみても感情的に批判するものばかりで、具体的に政策のこの部分がダメだと指摘している人は驚くほど少ない。


とにかく橋下が気に食わない。敵を作って名指しで叩くしつこい性格はなんかヤバい気がする。だからやること成すこと揚げ足とってあいつはダメだと引きずりおろそうとする。今までの政治家にいなかったタイプだから恐くなって必死に叩いている。そういう人ばかりに見えてならないんですよね。

今回の市長選挙に関しても、投票率の低さや無効票の多さを問題視する報道が多くあります。

橋下氏の得票は初当選した前回から半減し、大量の無効票も出た。選挙に圧勝することで「民意」を得て政策を進めるという手法が空回りし、橋下維新の政治的な影響力低下は避けられない。

出直し大阪市長選、橋下氏が当選 投票率は過去最低:朝日新聞デジタル

投票率は23・59%で過去最低、無効票が投票総数の13・53%を占めるなど異例ずくめの結果となり、橋下氏が仕掛けた市長選に対する市民の不満を裏付けた。

東京新聞:橋下流に不満鮮明 大阪市長選 無効票13% 前回の8倍:政治(TOKYO Web)


しかしながら、投票率が低くなったのは、対立政党が候補者を出さず、事実上選択肢がない状態にしたことに原因があるわけで、低投票率の責任を彼一人に押し付けて批判するのは、おかしいのではないですか?

自民、公明、民主、共産各党は「出直し選には大義がない」として、候補者を擁立しなかった。このため市民の関心は高まらず、投票率は、大阪府知事選とのダブル選となった前回(60.92%)を大幅に下回る23.59%にとどまり、過去最低を記録した。

時事ドットコム:橋下氏が大差で再選=出直し市長選、投票率最低−都構想は先行き不透明・大阪

しかも今回、橋下徹が獲得した377,472票は、過去の市長当選者の得票数を上回っている*1ことには触れずじまいです。

あなたは政策を具体的に批判できますか?

まあまあまあ。政治はプロ野球と並んで、素人がよく知りもしないで好き勝手言う話題の筆頭ですから、いいんですよ。大衆はそんなものです。そんた怠惰な大衆の支持を獲得するように最適化されたのが、ポピュリズム的な政治家なのですから。ポピュリズム政治家を生んでいるのは、不勉強で怠惰な有権者だとも言える。

有権者の心をつかむのがうまい政治家は、政治家として優秀なわけですが、そのことと政治家として正しいことをしているかとは別の評価尺度にあるわけです。人気を利用して悪政を行うかもしれないし、逆に大衆を良い方向に誘導するかもしれない。

橋下徹がどちらなのか。私が大阪府知事になってからの彼を見ている限り、問題や試行錯誤を繰り返しながらも、大筋で大阪を改善する政策を着実に実行していると、今のところ見ています。

先のエントリにも書きましたが、現状維持で何も変えなかったら目立って叩かれることもないわけですよ。新しく始めたことには全責任がありますけど、前のやり方をそのままにして悪かったら前の人が悪い。ババ抜きで最後のババをつかまずに逃げ切ってしまえばその人の勝ち。本当は悪い状況にあって放置したらその人の責任なんですけどね。大阪市の場合、過去に発行した市債が償還を迎え負担になっています。



はてなブックマーク等で、橋下徹を叩いている人は、候補者の政策や公約や実績を当然少しは調べた上で評価しているのでしょうね?まさかネットのニュースや、twitterや、テレビや新聞をちょっと見ただけの印象で語っていやしないでしょうね?よもや、自分が政治についてはちょっと詳しい。人を見る目がある、なんて思っていやしないでしょうね?自分の頭で考えてますか?

あの人はイケメンだからとか真面目そうだからとか顔で投票する有権者や、逆に「マスゴミが叩いてるということは、正しいのだろう」と反射的に書き込む、2ちゃんねるのまとめブログにいるネトウヨと呼ばれるような人たちと、あなた方は大差ないということはわかった上で発言されているわけですよね?発言するのは自由だけど、そんな今の論点が何であるかを共有していない人の印象論は聴く価値がないですよ。

参考

都市基盤と生活環境の整備のために活用してきた市債償還の本格化により増加し、公債費は平成25年度前後にピークとなりますが、その後は減少していく見込みです。

市税収入が低水準で推移するなか、人件費や投資的経費の抑制を図っているものの市税収入がピークであった平成8年度決算と比較すると、扶助費や公債費は2倍を超えるなど義務的経費が高い伸びを示しています。

(第2 大阪市財政の現状(1) p.9)

市政改革の取組みとして、新規の市債発行を抑制したことにより、全会計の市債残高は、平成25年度末には9年連続の減となる見込みです。
一般会計では4年ぶりの減、臨時財政対策債※を除くと9年連続の減となる見込みです。
(第2 大阪市財政の現状(1) p.10)

橋下徹を叩いている人に質問

あなたは橋下徹の性格が嫌いなだけじゃないんですか?

そうでないなら問題点を具体的にお願いします。

大阪都構想について調べたことがありますか?

大阪都構想に中身がないという人は、一通り見てから言ったらどうでしょうか。

タウンミーティングの資料は以下にあります。

ただこれはプレゼン用として試算からボトムラインを持ってきただけですから、具体的な細かい数字に現実性があるのかは法定協議会の資料を見る必要があります。橋下市長に実績がないという方は、「大阪市政これまでの取り組み.pdf」を見たらいいと思います。

都構想に反対だからといって、住民投票の前段階である法定協議会でいつまでも結論を出さずに時間と費用を無駄に使い続けることはいいのですか?

前の記事へのコメント

id:heystarman "こんなに熱心に有権者との対話をしている政治家を、私は他に知らない。"探せばいると思うけど。

ええ、ええ。私も不勉強なのであまり政治家の名前を知らないのですが、「探せばいる」じゃなくて具体的に名前を挙げていただければ幸いです。他にも優秀な政治家はいるでしょうが、橋下氏がこの点で、有権者との対話を重視している国内トップレベルの政治家であることに変わりはないと思いますよ。

id:NOV1975 額面通りの解釈をするとここまで擁護できるのかw

額面以外に何を見ればいいのでしょうか?

id:ncc1701 維新が発する情報「だけ」を踏まえると、たしかにこういう解釈になるだろう。

確かに維新からの情報だけで判断するのは危険だと思います。都構想よりも現行の制度が優れているというならその根拠を発信をするべきでしょう。

id:hungchang 都構想が何かわからないのではなく、戦時体制の遺物であり、住民自治の理念から乖離した都構想を何故今さら掲げるのかわからないということじゃないかと。

今議論している都構想は戦時体制のものですか?どういう点が住民自治から乖離しているんですか?

id:yoko-hirom 数ある市町村の中で大阪市だけが何故そうなのか。それは都構想で解決できるのか。甚だ疑問。

橋下氏が今取り組んでいるのが大阪であるだけで、他の自治体にはそれぞれの自治があるのではないですか。

id:filinion 民主主義というのは、注意しないとポピュリズムやマイノリティの弾圧に堕しやすいもの。任期中の強権的手法など、そういう「悪い民主主義」をこの上なく忠実に実行している政治家だとは思う。

前段は同意です。強権的手法とは、どのことですか?

id:mamezou_plus2 詳細を語らずスローガンしか語らないから。白紙委任で突っ走ろうとしたら思いの他抵抗に会ったので卓袱台返し。そりゃぁ語るしかないわな。

この選挙の前からタウンミーティングは行ってきたし、法定協議会の資料を見ても詳細を語っていないですか?

id:IkaMaru だって他の人間が冷静に分析したら支離滅裂だという事が露呈して「分からない」としか言いようがないんだもの。橋下本人が直接しゃべって「勢いで何となく分かった気にさせる」しかない

支離滅裂だと冷静に分析している人やページなどあれば教えてください。

id:nisshiey_s1 市議会解散請求の署名を集めきった河村たかしの方が、手続的正義を貫いたという点で地道に民主主義を実行したといえるんやないかと。歴史認識ではどちらもひどいもんやけど。

確かに。私は名古屋市民で、河村氏も思いつきのような発言やどうかと思う政策が多くある人ですが、停滞した市政に風穴を開けただけの価値はあると感じます。

id:anigoka それを言い出すとヒットラーも民主主義の権化|ただまぁ無効票の高さや投票率の低さが目立つ選挙に民意が反映されてるかというと甚だ疑問ではある

橋下徹ヒトラーになる素養は十分あると思いますが、その手法をもって評価するものではないでしょう。後段については前述。

id:cheapcode 都構想の出発点二重行政の無駄が問題だってんなら、大阪市を分割して小さくすればいいのに。

大阪市については5つ程度の特別区という基礎自治体に分割しようというのが、都構想ですよ。

id:ktasaka 民主主義っつーのはプロセスで、議会への根回しも民主主義なんですが…/美女の横顔だけを見て美女美女と騒ぐのもたいがいにしてほしいものです。

議会への根回しも民主主義だと思いますが、有権者に見えないところで決まっていくのが問題と思います。美女と騒いではいませんが、これは美女コンテストではないので。


法定協議会で議論されている資料や試案はここにあります。私も数時間かけて読んでいたのですが全部読み込むだけでも数百ページになってしまうので、結論を出すのは難しいです。
公認会計士や公会計の財務書類を読み慣れている専門家に分析して批判して欲しいと思います。

*1:2011年橋下徹750,813票、2007年平松邦夫367,058票、2003年関淳一368,433票

橋下徹ほど民主主義を地道に実行しようとしている政治家は他にいないと思う理由

先週大阪に行く機会があった。予定のない時間にどこへ行こうか迷ったが、大阪では橋下徹市長の辞職に伴う出直し選挙期間中であり、彼の演説を見に行ってみようと思った。その場でスマホで彼の選挙運動予定を調べてみると、難波パークスでの演説が一番近くであることがわかり、行ってみた。

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許可、認可、承認の違いって?許認可行政にまつわる言葉あれこれ

法令の中に登場する日本語について関心があり、その方面を掘り下げたことも何度か書いてきた。過去に宅建主任者や旅行業務取扱主任者資格を取得して、今も税理士試験の勉強のため法令の条文を書いて覚えるという作業を日々やっている。その中で許可だ認可だ承認だ、と似たような言葉が登場するが、当然法律上定義して使われている言葉なので混同してはならない。それぞれどのような違いがあるのか、自分用のメモとしてこの記事をまとめておく。


例えば酒税法第8条にはこのような規定がある。

酒母等の製造免許)
第八条  酒母又はもろみを製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造場ごとに、製造免許を受けなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、この限りでない。

(中略)

三  アルコール事業法 第三条第一項 又は同法第四条第三号 の規定によりアルコールの製造の許可又は承認を受けた者が、当該アルコールの製造の用に供するため、同法第二条第二項 に規定する酒母又は同条第三項 に規定するもろみを製造する場合

この条文中に登場する免許、許可、承認はそれぞれどう違うのか?国語辞典を引いて載っている日本語の意味以上に、法律的には特別な意味合いがあるはずだ。

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有楽町火災による新幹線運休でJR東海の損害は約30億円。なぜ運休は全線に拡大したか。

時事ネタとしてはいささか古い話になってしまったが、新年早々の1月3日、有楽町駅付近で火災が発生。隣接する東海道新幹線帰省ラッシュの最中に運休を余儀なくされ、大規模な輸送障害が発生した。JR東海の発表した「平成25年度年末年始期間のご利用状況」によると、1月 3日(木)の新幹線輸送人員(下り)は246.9千人、4日(土)は296.4千人であった。この輸送障害によってJR東海(9022)が受けた損害を算出してみた。合わせて、東京〜品川間の部分的な鉄道外事故が、なぜ東京〜新大阪全線の運転見合わせという大規模な輸送障害になったかについても考えてみた。

 3日午前6時35分ごろ、JR有楽町駅(東京都千代田区)近くから出火、ゲームセンターやパチンコ店など4棟(約900平方メートル)が焼けた。けが人はなかった。この影響で、JR東海は火災発生直後から正午前までの5時間余り、東海道新幹線の東京―品川間で運転を見合わせた。
鉄道軒並み運休、Uターン混乱 JR有楽町駅前火災 :日本経済新聞

火災が発生したのは午前6時30分ごろ。JR東海は午前6時36分ごろから東海道新幹線の運転を見合わせた。正午前に運転を再開したものの、遅れは終日続いた。夜になっても遅れは2時間を超えたという。上下線で91本が運休、15本が区間運休となり、遅れは238本に及んだ。

有楽町火災で露呈 新幹線品川折り返し増やせぬ理由  :日本経済新聞

輸送障害による直接的損害

JR東海では金銭的にどの程度の損害が発生したのか計算してみた。運休により、旅客が旅行を中止した場合の運賃・料金は全額払い戻しとなる。また、着駅に2時間以上遅延した特急列車の特急料金も全額払い戻しとなる。*1 事前販売分のきっぷが全て払い戻され、当日の売上もなくなったとすると、運休・遅延分の列車定員にそれぞれ運賃・料金を掛け合わせれば本来得られるはずだった収益が求められる。

700系/N700系 16両1編成1323席(普通車1123席・グリーン車200席)

運休:106本
遅れ:238本

東京〜新大阪
運賃:8,510円
のぞみ特急料金(指定席/繁忙期):5,740円
ひかり・こだま特急料金(指定席/繁忙期):5,440円
自由席特定特急料金:4,730円
グリーン料金:5,150円

※EX-IC(エクスプレス・カード会員価格/普通車指定席/大人1名):13,000円
※特別企画乗車券(新幹線回数券)は12月28日〜1月6日の期間は使用できない。



のぞみ指定席:14,250円
ひかり・こだま指定席:13,950円
のぞみ・ひかり・こだま自由席:13,240円
のぞみグリーン席:18,690円
EX-IC利用:13,000円


乗車料金は、大人/子供、指定/自由、普通席/グリーン席、全区間/区間利用等で変ってくるが、概算で一人当たり13,000円を利用したとして、1月3日の乗車率はほぼ満席か、それ以上だったと思われるので、乗車率を仮に100%とする。

以上から、運休分の損失は、

13,000円×1323席×100%×106本=約18億2300万円

遅れが発生した238本のうち、特急券払い戻しの対象となる2時間以上の遅延がどれだけだったのか不明だが、仮に50%とすると、

5,500円×1323席×238本×50%=約8億6590万円

80%とすると、

5,500円×1323席×238本×80%=約13億8544万円

合計で、直接的な損害だけで、27億円から32億円程度の損失があったと思われる。

※他社線への振替輸送は行われていないのでその負担はなし。※列車の運休により旅行を中止した場合は、運休した部分だけでなく全区間の運賃・料金が払い戻しとなるのでさらに増えることになる。※旅客の何割かは翌日以降に移動をシフトしたと思われるが考慮していない。※JR東日本在来線に与えた影響は考慮していない。


出火元の重過失は認められない気配であるので、恐らくこの損害はJR東海が丸かぶりになるのではないだろうか。

鉄道などの運輸事故に詳しい国府(こくふ)泰道弁護士は「失火責任法という法律がある。失火による火災の場合は、火元の重過失が認められたときのみ、賠償責任を負うと定められている。明治時代にできた法律で、木造家屋が多く火災が起こりやすいという国内事情を勘案して作られた。だから今回の火災の場合も、火元の重過失の有無が焦点になる」と話す。

有楽町火災、億単位の損害賠償どうなる? 重過失の有無が左右 - ライブドアニュース

品川折り返し運転はなぜできなかったか

今回の火災では、報道で見ても火の手が走行する新幹線に迫っており、運休はやむを得ない。しかし、現場は東京〜品川間の一区間に過ぎず、品川で折り返す運用を行えば三大都市圏の輸送は確保できる。なぜ品川で折り返し運転ができなかったのかという議論がネット上であり、私は面白く見ていた。


東海道新幹線は世界でも他に類を見ない高頻度大輸送を行っており、年間平均の輸送人員は一日当たり40万9千人。運行1列車当りの平均遅延時分は驚異の0.5分である。*2今年はその記録を年初から下げてしまう不名誉な事態に見舞われたわけだが、JR東海の路線別の営業収入の9割超は東海道新幹線から得ている*3ので、JR東海としてもなんとしても新幹線は止めたくないはずだ。新幹線だけは、と言ってもいいくらいに会社も新幹線を重視している。


にもかかわらず、運行を止めざるを得なかったのは、先の日経新聞の記事でも詳しく解説されているが、品川駅の設備では東京駅並に折り返す列車をさばくことができなかったからである。

現在の東海道新幹線の時刻表を見ると、定期列車だけでも一時間に最低のぞみ6本、ひかり2本、こだま2本が出ている。臨時列車を加えるとさらに増え、東京駅18時台発の列車は10-2-3の最大一時間15本になる。東京駅には6線あるが、品川駅は4線でそのうち折り返しに使えるのは配線上の制約で内側2線だけ。これではそもそも全ての列車が駅に入ることができないし、交代の乗務員や清掃員もみな東京駅にいる。


でも座席転換も、車内清掃も、車内販売もいらないから、とりあえず動かすべきなのではないか。ゴミ箱が全部埋まっていようが異常時なのだから文句は言うまい。全く動かないよりはましではないか。品川駅の折り返し設備は一応使えるのだし、電車は燃料の補給も必要ないし、とりあえずいる乗務員とある車両を使って、いけるとこまでいったらどうか。指定席は時刻通りに動いていないときはかえって混乱を招くから、全席自由席の運用にして来た列車に乗ってもらったらいい。保安装置(ATC)があるから最悪でも衝突事故は起きないだろう。


・・・たぶん、大混乱になるだろう。バスのようなイベント時のピストン輸送等が比較的柔軟にできる交通機関と違って、鉄道は緻密に練られた計画通りに動くことで成り立っている。本線上で一つでも故障を起こしたら、後の列車は全部詰まる。信号が作動して衝突はしないけど、前にも後ろにも動けなくなる。故障など起きなくても、乱れたダイヤで駅に交代の乗務員が来なくて5分止まっただけで、続行の列車は駅手前で停められる。玉突き式に遅れはもっと拡大するだろう。時速270キロで走る列車が最短3分で続行して走るというのはそういうことだ。

どの車両(編成)がどの運用に入って、例えばA駅からB駅をX列車として走って、B駅から回送して車庫に入るかというのは事前に全部組まれている。乱れるダイヤにその場その場で運用変更して対応していたら、一日走った頃には車両も乗務員もどこにいったか誰もわからなくなるだろう。次の日の始発に備えて名古屋にいるべき車両がなぜか博多にいるということになりかねない。そうしたらダイヤの乱れはその日だけでは済まない。2000年の東海豪雨の時にあった混乱がそれではないか。

あるいは、イレギュラーな運用変更を行って、駅の設備が対応しておらず列車が入れないというミスが最近関西線でもあった。

開業以来最悪の遅延記録は、2000年(平成12年)9月11日に名古屋を中心に起きた東海豪雨が原因のもの。名古屋市周辺では一部河川の警戒水位を越えるような降雨にもかかわらず「遅れを最小限にしたい」、「新幹線を運休させるわけにはいかない」と東京駅から次々に発車させた。各列車は徐行と停止を繰り返し、東京駅 - 米原駅間だけで70本近くの列車を団子状態にしてしまい、5万人を超える乗客が長時間車内に閉じ込められ、列車ホテル状態で夜を明かす事態となった。翌12日昼過ぎになってもダイヤの混乱は収拾せず、博多発東京行き「のぞみ20号」は“22時間21分遅れ”で終点到着という新幹線史上最悪の遅延記録を作った。「もっと早く運転を中止すべきだった」と運行管理の不手際を各方面から問われ、運輸省(現在の国土交通省)がJR東海に事情説明を求める事態にも発展した。

東海道新幹線 - Wikipedia


これが事前に予定された工事等で長時間、区間運休するようなことが想定されたなら、滞りなく列車を運行するプランができていただろう。突発的な災害でも数日間運転再開が不可能なら残りの区間で動かす変更もあっただろう。

今回の件で思うのは、JR東海は、東京〜品川のみが運転できなくなる事態はおそらく想定していなかったのだろうが、第一には有楽町の火災がもっと早く鎮火すると思っていたのではないかということ。第二に想定以上に火災が長引くことがわかってからも、いずれ回復するから、本格的に品川折り返しに切り替えるべきではないと判断したのではないだろうか。まあ全部予想に過ぎないのだけど。


最近では在来線でも台風等で事前にダイヤの乱れが予想されるときは、間引き運転をするような運用をすることがある。これは線路上に多数の列車がいて遅れが生じた場合、後ろで詰まった列車の遅れはさらに拡大することへの対策だろう。高速道路で、カーブの手前で一台が少しブレーキを踏むと後続車にどんどん連鎖していき、何十台か後ろでは渋滞が生まれるということと、似たようなものだろう。

火災が発生したのは午前6時30分ごろ。JR東海は午前6時36分ごろから東海道新幹線の運転を見合わせた。正午前に運転を再開したものの、遅れは終日続いた。

JR東海は午前10時過ぎから、品川駅での折り返し運転を始めている。合計で7本の臨時列車を走らせた。

JR東海の対応が万全とは言わないが、未曾有の事態に出来ることはやったのではないか。

JR東海にとっての品川駅の意味

ところで、東海道新幹線の品川駅は2003年(平成15年)10月に開業。渋谷・新宿・池袋方面、京急線沿線からのアクセスが向上された。

周知のように、国鉄から分割民営化されたJR東海在来線の営業エリアは、東は熱海、西は米原までだが、東海道新幹線は東京〜新大阪間がまとめて払い下げられた。


JR東海営業エリアマップ(出典:JR東海アニュアルレポート2013)


東海道新幹線の品川駅がある場所はもともとJR東日本の用地だったのだが、JR東海にとっては東京の拠点として品川の獲得は悲願だった。今度の新しい人事でも、新幹線の海外への輸出のトップセールスを担うとして代表権を有している葛西敬之JR東海会長だが、品川駅は絶対必要だとかなり強行に主張したらしい。このあたり朝日新聞記者の神田大介さんや、日経新聞のアーカイヴや、葛西氏の著書にも書かれている。

品川問題の発端は九〇年五月。JR東海が「限界にきている東海道新幹線の輸送力増強には、品川に新駅と車両基地を建設するしかない」とぶち上げた。

(中略)

ところが、自社用地を建設予定地に名指しされたJR東日本は「事前に一言も相談がなかった」と猛反発。東海が簿価による土地譲渡を求めていたことも東日本をいらだたせた。東海は運輸省に仲裁を求めたが、「いたずらに国の介入を求めるのは筋違い」(住田社長)と逆に反発を招く。

(中略)

収束の兆しがみえたのは今年の一月末。運輸省から東日本に対し、内々の打診があった。「そちらの言い分は正しいが、東海道新幹線の輸送力増強は国家的課題。東海には陳謝させるので、話し合いに応じて欲しい」。

「品川新駅」建設本決まり、東海道新幹線“増強”に光――発車までには時間(日曜版) :日本経済新聞

「当駅で折り返すことで大井車両基地に出入りする回送列車との競合を回避し、線路容量を最大限活用することができるように」との触れ込みで品川駅の必要性が言われたのだが、それは東京駅のポイント改良でまかなえることになり、現在まで品川折り返しの定期列車は設定されていない。当初7線を収容する車両基地を含む計画が、最終的に現在の2面4線に落ち着いた品川駅だが、そうしてできた駅の上にはJR東海の東京本社があり、将来は地下にリニア新幹線の駅ができる。

実は最初から品川駅に折り返し拠点として使える大規模なターミナル機能を設けるつもりはなかったが、(品川の土地を獲得するために)どうしても駅を作りたいがために、ターミナル機能の必要性を訴えた。そんなしたたかな交渉戦略だったのではないか、という穿った見方もできてしまうのである。

*1:東海旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第282条−第290条の3 (運行不能及び遅延)簡単な説明はこちら

*2:JR東海アニュアルレポート2013より。

*3:旅客運輸収入の新幹線、在来線の金額はそれぞれ1,069,680百万円、99,428百万円。鉄道事業営業収益には他に運輸雑収があるが、内訳は広告料や構内営業料と思われる。平成25年3月期有価証券報告書より。

平成25年度(第63回)税理士試験結果をふまえて

暑い夏の最中に受けた試験から、はや季節は変わり、受験生を悩ませ、苦しませ、そして落ち着かせるには十分過ぎる期間を経て、やっと結果が発表になった。私がその封筒を受け取ったのは、また鬱な時期が到来し勉強も手に付かず世界の終わりのような気分で突っ伏していたときで、悶える心境とともにfacebookに書いてみたら、友達にはびっくりするほどスルーされた。予備校の先生への報告も済ませてきて、一足遅くなったが記録のためここにも書いておく。

私の試験結果は

ものものしく「重要書類」と書かれた封筒を開ける。


今年受けたのは簿記論と財務諸表論の二科目。幸い両方とも合格することが出来た。



・・・よかった。ひとまず安心。

年末やゴールデンウィークの特別講座を受けていた(要は通常の授業で平均点を取れていなかったので追加で受けたのだ。)受験生の中で、他に合格の知らせがあったのはいないそうで、先生が喜んでくれた。

「継続性の原則」ならぬ、継続して勉強ができない不安定なメンタリティのため、圧倒的に勉強時間不足で、最後の追い込みでギリギリ持って行くことができたという感じ。受験後の自己採点で財は、合格確実ラインを超えていたのでまず大丈夫だろうと思ってはいたものの、簿はボーダー近辺で、風向き(配点)次第ではアブねーなーとヒヤヒヤしていた。

簿には、私の見解では2通り計算法が浮かんで、予備校解答ではおそらく想定外なので×と言われたのだけど、別解で○にして欲しいなあと思っていた問題があったので、ここが×になって2点落として「不合格A」なんてなったら悔やんでも悔やみきれないなあとも思っていた。

元はと言えば簿・財・相の三科目で始めて、4月で相続を落としていたので、受からなかったら目も当てられないところだった。なんとかここに書くことができる結果に間に合わせられてよかった。

試験結果統計から

少し気を良くしたので、見てもいなかった国税庁の公表結果を少し分析しておく。

区分 受験者数 合格者数 合格率 24年度合格率
簿記論 19,935 2,441 12.2 18.8
財務諸表論 16,137 3,611 22.4 20.7
所得税法 2,374 351 14.8 12.3
法人税法 6,972 863 12.4 12.6
相続税法 4,100 478 11.7 12.8
消費税法 10,912 1,288 11.8 12.4
酒税法 817 96 11.8 12.4
国税徴収法 1,423 184 12.9 13.6
住民税 744 91 12.2 16.5
事業税 872 105 12.0 9.9
固定資産税 1,232 169 13.7 17.0
合計 65,518 9,677 14.8 16.8

▲スタイルが崩れてしまっているので、リンク先で見ることを推奨。

財の合格率が大きく上昇して22.4%となっていたようだ。これはだいたい受験後に私が受けた印象通り。当時のtweetを下に引用しておくが、想定よりもかなり簡単そうに見え、むしろ戸惑った記憶がある。逆に簿の合格率が大幅に下がっていて、これはどこに配点がきたのかすごく気になる。どの大問を捨てたかで明暗が別れただろう。

  • 簿記論は、本支店合併精算表とか、厳しい。帳簿は捨てた。第三問でどこまで積み上げれるか。受かってて欲しい。 posted at 17:15:25
  • 財務諸表論は、穴埋め結構多くて記述少なめだったし、計算は捻った問題少なくて、税理士試験てもっと鬼畜じみた到底時間内に処理しきれないようなのが来るんじゃないのと思ってたから、意外に素直でびっくりした。合格点上がってきそうな、ちょっとしたミスが命取りになりそうな。 posted at 17:05:50
  • 今年の税理士試験終わったー。これでしばらく禁欲生活からも解放。最後の追い込みになってやっと一日10時間とか勉強できるようになった。blogに書きたいネタや、遊びにいきたいところがたくさんあるよ。自分の弱さと能力の低さに向き合うことになった一年でした。ありがとうございました。 posted at 16:57:18


来年の科目選択に向けて受験者数を見ていて思ったが、酒税の少なさは際立つんだなあ。全国で100人も受からない。1問2問落としたら即アウトのレベルの高い争、かつマイナーな科目になるけども、個人的には楽しんでやれそうな科目なので選択の視野に入れている。

それに比べて国税徴収法が、住民税、事業税よりも多いのは意外。前年度の1249人から珍しく14%も増えているのは、去年、国税徴収官が主人公のドラマが放映されていた影響なんじゃないか?と思ったりして。

住民税、事業税はベッタリ暗記科目だと聞いているので、私は絶対に選択することはないだろうが受験者の人気にもそれは表れているのじゃないだろうか。法人と所得で3倍も差が開いているのも意外。


コネタとして、一年で5科目一発合格がありえるのか先生と話していたのだけど、実は十数年ぶりに一人出現していたらしい。*1全くゼロからの初挑戦ではなかったようだとも聞いているけど、常人の能力で成せる範囲を超えている。それこそサヴァン症候群のような特殊能力を持つ人なんじゃなかろうか。

来年

来年の試験に向けて、相続、法人で来たのだけど、また調子を崩して休んでしまい、もう追いつくのが無理なくらいになってしまったので、計画を立て直す。

これから勉強を始める人へのガイドや勉強法などを書いておきたいと思っているが、しばらく時間がなさそう。

*1:"試験の難化もあり、長らく誕生していなかった一発合格者ですが、平成23年度の試験で平成6年度以来となる合格者がついに現れました。" 【会計士Xの裏帳簿】今年は出るか?税理士試験「一発合格者」 | 税理士、公認会計士、会計業界のトピックスならカイケイ・ネット