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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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宅建登録実務講習で聞いた不動産業界裏話

法律 社会 経営・会計

先日、宅建登録実務講習を受けてきた。宅建試験に受かったことは先回書いたのだが、宅建宅地建物取引主任者)というのは試験に受かっただけではまだ資格を得ただけの第一段階で、実際に宅建主任者として業務に従事するためには資格登録(→都道府県知事に行う。37,000円)を行い、主任者証の交付(4,500円)を受けて初めて可能になる。その後も資格自体は生涯有効だが、主任者証は有効期限が5年で更新の度に法定講習(11,000円)を受ける必要がある。まぁなんだかたくさんお金を払うなぁという感じ。資格登録を行うには、宅建業者で2年以上の実務経験が必要とされているのだが、実務経験が無い者のために、それと同等以上の能力を有する者としての認定を与えるのがこの登録実務講習というわけだ。複雑、、、表を書いておいたほうがよさそうだ。


宅地建物取引主任者試験
   ↓
実務経験2年以上 or 登録実務講習
   ↓
資格登録(試験合格地の都道府県知事)
   ↓
法定講習(宅建合格から1年以上経過の場合)
   ↓
主任者証交付
   ↓以後5年毎
法定講習・主任者証更新


登録実務講習は実施機関として登録された民間が行うが、国が定めた規則に従って行われるものなので、受講人数や出欠、終了試験など厳密に行われる。講師は不動産屋での経験豊富な方が務める(これも登録から何年以上と要件があるらしい)。いろいろと面白い話も聞けたので以下それを書いていこうと思う。


登録実務講習では、主任者試験でも学んだ宅建業法や法令上の制限等について、実際にどういう手続や書面の記入をするのかを学んでいく。主任者試験では法律上これをしなければならない、してはいけないという最低限レベルのことを覚えたのに比べると、契約書面作成や不動産登記に必要な知識、営業に際してトラブルを避けるために心がけておいたほうがいいTipsのようなことも含まれていた。

スクーリングは2日間で12時間の講義と修了試験がみっちり。試験は○×の正誤問題が30問と、記述(資料を見て登記書類等の空欄を埋める)が30問。それにしても講義の最初の講師の発言には笑った。「試験にはどこが出るかはわかりませんが、このテキストで重要な箇所を30箇所言いますからマーカーして必ずできるようにしてください。」「次に○番目のチェックポイント、ここは必ず覚えてください。」なるほど。99%受かるってのはこういうことか。

不動産業界裏話

本人も知らない借金

一般的に家やマンションを購入する際にローンを組んで購入する人が多いが、その際に不動産屋はその人の借入れ状況の調査を行う。返済比率(収入に占める返済額)に影響し、あまりに無謀な計画だと借入れ自体ができなくなって契約も流れてしまうため。本人に申告してもらうのだが結構漏れがあるらしい。特にカードローン、オートローン、奨学金、これらを本人が借金だと思っていないことが原因。カードの場合1回払いならいいのだが、分割払いがあると限度額いっぱいまで使っているとみなされるらしい。何気なく借金してるなんて馬鹿なことにはならないようにご注意を。話はそれるが、奨学金なんて名ばかりで貸与の奨学金はただのローンだよなぁ。

空室率を下げ儲ける方法

物件の価格査定の方式で、特に投資不動産の場合に使われるのが収益方式の査定。家賃収入÷土地建物の取得費用で利回りを計算するのだが、4〜10%前後に設定するのが一般的。例えば一部屋5万で10室だと5万×10(室)×12(月)=600万の収入。空室のリスクを見込まないといけないので、都会で駅近くだと低くていいが、辺ぴなところになるほど空室率が上がるので利回りも高めに見積もらないといけない。部屋数が少なくても利回りが上がる(例えば4部屋しかないと1部屋空いただけで家賃の4分の1が入ってこないことになる)。利回りを上げるということはその物件の価格は下がる。

逆に言うと利回りの高い条件の悪い物件の空室率を下げればとても儲かる。スーパー大家と呼ばれメディアにも取り上げられる埼玉の奥地(羽生だって。行ったことあるぞ。)で大家をやっているおばちゃん、鈴木ゆり子さんという人の話。最初はハウスクリーニングのパートをしていた主婦だったのだが、自分でアパートを買い賃貸を始めた。業者に頼めば相当かかるリフォームを自分で行い綺麗にした。普通は管理会社に任せてしまうところを全部自分でやり、入居者とも密にコミュニケーションをとる。入居者にとても信頼されているためこの人の物件は空室ができてもすぐ埋まるそう。今では何十棟も所有し年商1億だとか。

法務局が辺ぴな場所にある理由

土地や建物の権利関係が記録されている不動産登記記録は法務局で行う。登記記録は土地1筆、建物1個ごとに編成されていて、登記事項証明書(全部事項証明書・登記簿謄本・千円)と登記事項要約書(登記簿抄本・五百円)がある。(閉鎖事項証明書というのもあるが。)内容は同じで違いは値段と法務局の印があるかないかだけ。

法務省:不動産登記のABC

今ではコンピュータ化された登記記録だが、昔は和紙のような紙に全部手書き(筆)で記録していたため火災によって消失することは絶対に避けなくてはいけなかった。そのため駅前などの密集地を避け、結果アクセスの不便な場所に位置することになったところが多いんだとか。最近新しくできたところは便利な場所にあることが多い。

ちなみに、登記記録上の名義人は必ずしも真の所有者であるとは限らない。*1つまり何らかの理由で所有権が移転しても登記記録がなされていないことがありえるということ。そのため、宅建業者は公共料金の支払い書や固定資産税納税通知書等、複数の手段によって調査を行わなければいけないとされている。

売買契約書は何枚必要か

不動産売買の契約が成立した場合契約書を作る。通常、媒介業者である不動産屋が作成し、売主、買主が署名、押印し互いに交付する。売主、買主がそれぞれ持つので通常2枚作られるが、これは必ずしも2枚作る義務は無い。契約の内容が確認できればよいので、業者間の取引では1枚作ってコピーを渡すことが多いという。大して変わらないように思うが、実は大きな違いがあって印紙税が節約できるのだ。

売買契約書(土地・建物)、土地の賃貸借契約書は課税文書であり額面金額に応じて印紙税を納めなければならない。印紙を張り、消し印することで納税する。(張っていないことが発覚した場合3倍の過怠税が徴収される。)1枚分の印紙代を売主・買主で折半することで安く上げることができるというわけだ。

法と実務で全く逆のことが行われている例

不動産の売買契約が成立してから引渡しまでの間に解約になるケースとして4つが考えられる。手付解約、ローン解約、違約解約、そして天災地変だ。民法では、不動産の売買契約成立後、引渡しまでの間に天災地変、即ち地震や火災などで建物が滅失してしまった場合、危険負担として債権者主義がとられているため、買主が代金を契約通り支払わなくてはいけないことになっている。主任者試験でもそう勉強したはずだ。しかし実務では、解除権を買主に与える特約を盛り込むことにより、リスクが売主に転換されている(債務者主義になっている)のが通常ということ。これは売主は損害保険によりリスクの回避が可能と言うのが理由のようだ。

仲介料の上限は家賃の1か月分?

これは土地の売買等と違って、アパートを借りる時等誰でも関係してくる話なので注目して欲しい。アパートやマンションなどを借りるとき大家さんには、敷金や礼金、家賃を、紹介してくれた不動産屋に媒介報酬(通常仲介料と呼ばれている。)を支払う。これは宅地建物取引業法(正確には法の指定を受けた告示)で上限額が決まっている。

国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」

 第四 貸借の媒介に関する報酬の額

宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の1.05倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.525倍に相当する金額以内とする。

消費税が含まれているので細かいが、要は大家から家賃の半額、入居者から家賃の半額、合わせて家賃の1か月分を受け取っていいですよ、という決まり。この割合は上限の範囲内で自由に変えてもいいのだが(大家から0%、入居者から100%等)片方から50%以上を取るときは承諾を得なければならない。しかし現実には当たり前のように入居者から1月分を取っているところがあるようだ。

私も実は今のところ借りる時に1月分払ってしまっているのだが、そんなこと承諾した覚えはないんだがね。最近仲介料は家賃の0.5月分!て大々的に宣伝してる業者があるんだが本来それが当たり前なのだ。

なんでこんなことになってるかというと、日本では戦後建物が不足していたことから、売り手である大家の力関係が強かったのだ。そもそも大家と店子という言葉にも表れているように、大家はえらいもの、店子はお願いして入れてもらうものという関係だった。仲介料を大家も払えとかそんなこと言うんだったら他の人に入ってもらうからいいよ、あんたとは契約しない、と。その頃の慣習で入居者が払うことになってしまっているのだが、今は賃貸物件の供給が過剰になって買い手市場になりつつあるので力関係から言って逆転してもいいはずなんだけどね、ということ。

不動産屋は大家からは何も取っていないのかというと、なんとこれがまた、広告料という名目で別に取っていたりもするらしい。現実に供給が過多になっていて宣伝をしなくては埋まらないので、広告料の実費に値するところは負担して欲しいところらしいが、これは業者のほうから請求すると違反らしく、契約の書面上、大家の方から払いますと申し出たことになっているらしい。

宅建業法の解釈・運用の考え方」によれば、規定されている報酬および依頼者(貸主)の依頼によって行う広告の料金に相当する額以外にいわゆる案内料、申込料や依頼者の依頼によらずに行う広告の料金に相当する額の報酬は受領することはできないとされており、特別な依頼もしていないのであれば、支払う必要はありません。

http://www.retio.or.jp/info/qa17.html


他にももう少し書けそうなネタがあるのだが、ここまででかなり時間がかかってしまったのでとりあえず。最近の不動産屋の収入源、道路の種類、広告規制、重要事項説明、説明すべき諸法令、心理的瑕疵(自殺物件)、レインズ、税務、住宅ローン減税など。書く余裕があったらまた書きます。

退居時の敷金返還について

先日知り合いとの間でこの件が話題になったので。敷金は、家賃の滞納や建物の破損等があったときの賠償に充てる費用として入居時に大家に預けておく一時金とされる。(関西の方では「敷引き」といって礼金が無い代わりに敷金から一定の額が戻ってこないと予め決めてある習慣もある。)預け金だから基本的に退居時には全部返ってくる性質の金だが、次の入居者に貸すための原状回復費用だと言ってなんだかんだ引かれてほとんど戻ってこないことがままある。しかし、建物というのは普通に生活していたら痛んでいくものだ。通常の使用ではつかない(カーペットにしみを作ったとかタバコで床を焦がしたとかの)特別な傷を除いて、資産価値が低下した分は当然に大家が自分で(家賃収入から)負担すべきものだ。入居者の意識としても、退居時に改めて数万円払えと言われると抵抗が大きいが、数年前の入居時に払ったものが戻ってこなくてもまぁしょうがないかとあきらめてしまう者が多いようだが、それは朝三暮四みたいな話でうまく丸め込まれないように。件の友人は当初大家に9万だか請求されたのを、自然損耗だと主張、小額訴訟もちらつかせたら2万まで下げられたとか。

国土交通省では修繕費の負担についてこれまでの判例等を踏まえて、建物の部位毎に経過年数なども考慮の上、具体的に貸主・借主のどちらが負担すべきかについてまとめたガイドラインを発表している。法的拘束力のあるものではないが、これに従って行われるのが望ましい。これによれば、テレビや冷蔵庫等の後ろの壁の黒ずみ(電気やけ)や壁にあいた画鋲の穴、鍵の交換費用などは払わなくていいが、壁の下地ボードの張替えが必要な程のクギ穴やネジ穴、キャスター付きのイス等によるフローリングのキズ、へこみは借主が負担するものとされている。

但し、個別の契約において特約が結ばれていた場合それが優先される*2ので注意。私が以前借りていた学生マンションは、タバコによるクロスの変色や鍵の取替え費用は借主負担とされていた。契約時に予め一覧表を渡されていたので揉めることも無かったが。まずはご自分の賃貸借契約書をよく確認することをお勧めしたい。

原状回復とは
借主が“借りた当時の状態に戻す”ということではありません。借主の不注意による損耗は、当然、借主が修繕費を負担することになります。しかし、通常の使用による損耗や年数が経ったことによる自然損耗の修繕費用は月々の賃料に含まれているものであり、借主に原状回復義務はないとされています。

(10/03/03 広告費について追記)

*1:日本では不動産における公信力は認められていない。

*2:信義誠実の原則(民法第1条2項)や公序良俗(民法第90条)に反する契約は無効とされるが。