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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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株主総会という欺瞞〜株主議決権とは何だったのか

経営・会計 社会

去る6月28日(火)、東京電力株主総会が行われた。私は同日名古屋で開催された中部電力株主総会に参加した。その感想はtwitterに少し書いたが*1、改めてここで整理してみようと思う。



私は株式投資の知識が少しあるだけで会社法や会社制度の専門家ではないが、今回を機に少し調べてみて株主総会という意思決定システムそのものや、資本制度のあり方に疑問を持った。これだけ社会的にも注目が集まったことにも関わらず、基本的なことを説明してくれる人が出てこないのが不思議でならない。


株主議決権とは何だったのか

株主総会は会社の最高の意思決定機関である。会社の所有者たる株主が会社の方針や経営に関する重要事項を決議する。総会の場で決定されたことは、同じく総会の場で選任された取締役をもって実際の会社経営に反映される。

3月11日に太平洋沖で発生した地震と、津波による被害で福島第一原発が事故を起こしたことを受け、脱原発を主張する株主から提出された議案が今年は可決され、会社の舵取りに大きな影響があるやもしれないと注目されていた。総会は過去最高の株主が参加、開催時間は6時間にわたった。議事の進行方法に動議が繰り返し発せられ、会場内の賛同が多数を占める雰囲気になったこともあったが、事前に会社側に委任している株主で過半数を握っているとして終止会社側のペースで押し切られたことは、報道やtwitter等のネットメディアで周知の通りである。

 6月28日(ブルームバーグ):東京電力株主総会は会社側が提案した取締役17人と監査役2人の選任案を可決、原子力事業からの撤退を定款に盛り込む株主提案を否決し、閉会した。参加者数が9309人と過去最高を記録したほか、質疑時間が長引き過去最長の6時間余となるなど異例の総会となった。

(中略)

最後は株主総会議長の勝俣恒久会長が審議を打ち切り採決した。会場の株主からは賛否数をきちんと数えるよう求める声が出ていたが、勝俣議長は大量の委任状を受け取っていることを理由に目視で採決を続行し、否決の結果となった。

  東電によると、総会の議決件数は130万6633、そのうち委任状は107万8015だった。

(以下略)

会場に参加した株主の議決権数(上の記事は字が違っている。)130万6633のうち少数株主(大株主)2名の分107万8015が会社側に委任されていたということである。BS JAPAN勝間和代氏の番組にジャーナリストの岩上安身氏がゲスト出演した回では、岩上氏が、その委任した株主とは議決権の数から第一生命と日本生命ではないかと指摘している。以下に示した資料を見ると、第一生命の(55,001千株)と日本生命の(52,800千株)を合計すると確かにこの数字になる。ちなみに東電株の単元数は100株であり、100株につき1議決権がある。

株式に関する事項(2011年(平成23年)3月31日現在)


発行済株式総数 1,607,017,531株
株主数 933,031名


上位10名の株主
株主名 持株数(千株)
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 57,963
第一生命保険株式会社 55,001
日本生命保険相互会社 52,800
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)      47,949
東京都                          42,676
株式会社三井住友銀行                    35,927
東京電力従業員持株会                    24,793
SSBT OD05 OMNIBUS ACCOUNT – TREATY CLIENTS       24,087
株式会社みずほコーポレート銀行                 23,791
チェース マンハッタン バンク エヌエイ ロンドン エス エル オムニバス アカウント 22,267


平成22年度報告書(PDF) p.16より


番組でも勝間氏が、総会で多数を占めた株主の意見を聞かないのはおかしいという主旨の発言があったと記憶しているが、いや待って欲しい、その指摘はおかしい。株主平等の原則では出資額(持株数)に応じた議決権と配当が与えられる。一人一票の議決権を持つ生協とは違い、株式制度ではお金をたくさんだした物がたくさん票を持つのである。そのことにいまさら議論の余地はない。であるならば今回のことも当然ということになる。

総会中にも「(あらかじめ決まっているのなら)なんのためにこの株主総会を開いているのか」という発言(質問)があったそうだが、総会の開催は会社法で定められていて、いくら会社側の予定調和で進むしゃんしゃん総会であろうと、それが法的に意味を持つ行為だからである、という回答になろう。

最低単元株さえ購入すれば総会には参加できるので、株を買いあって総会に乗り込んで意見表明して会社を動かそうという運動は市民運動家等によって従来から行われてきた。しかしもし株主提案に賛同が多く集まって会場が押せ押せムードになっていたとしても、そして今回の東電では実際にそういう場面があったが、経営に影響を与える判断は大株主の意向で決まっているんだということが白日の下になった。それが資本主義の原則であるのは前述した通り。私たちがとんだ茶番だなあと感じてしまったのは、みんなして儀式を執り行っていた、幻想を抱いていたということがわかってしまったからである。

私はこうした脱原発に向けて総会に参加する市民運動家の活動を無駄だとは思わない。ステークホルダー(企業活動による影響を受ける利害関係者)である地域住民が、より深く関わっていくために株主として参加することは意味がある。総会の場で訴えることも一定の効果はあると思う。だがその運動の方向性はよく考えた方がいい。議決権を握る大株主の意向で決まってしまうなら、その大株主をどう動かすのかを考えるべきだ。総会での訴え方もただ熱い思いを語るだけでなく効果的な演説をするべきだ。

私が参加した中電の総会も酷い物であった。年に一度経営陣に対して堂々と自分の意見を表明できる場とあって意気込んでやってくる株主も多い。直接経営に関係ない質問や、大演説をやってのけ、会場のひんしゅくを買ったりもする。株主のリテラシーが問われる一方で、多数の質問を積み残したまま議長が強引に進行する場面が見られた。これでは株主総会が形骸化している、意味が無いという感想を持つのにも無理は無い。

報道では2700人が参加したとあったが本会場に入れていたのはざっと600人。多く見ても800人というところで、あとはロビーの待合席で同時中継を見ていた。議決にも参加できない。ある株主の「これくらいの株主の参加を予測して満足に総会を運営できない経営陣に原発を安全に運営できるのか」という皮肉の利いた質問もあった。会場で厳密に集計を行っているのかは疑問があった。議長の採決に挙手や拍手で答えるわけだが、議決権が一つしかない人も何百も持っている人も会場の中ではわからない。やはり書面やネットでの事前行使、委任によって結果は決まっているから、会場での反応はどうでもいいということだったのだろう。そのことを明かさずに採決しているポーズだけ取るのは、人を馬鹿にした話である。

会場入場時に渡された株主出席票(整理番号が書かれていて発言時は番号と名前を名乗る。)の下部は切り取って投票券にできるようになっていた。もし事前の議案の賛否の結果が拮抗した場合、会場で投票を行うということだろうか。一応、その準備はされていたようであった



だがここまで書いてきて新たに一つの疑問が浮かぶ。大勢を決めた大株主の意思決定は一体誰が行ったのだろうか?今回私が問題だと考えた主題は後半に続く。