私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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許可、認可、承認の違いって?許認可行政にまつわる言葉あれこれ

法令の中に登場する日本語について関心があり、その方面を掘り下げたことも何度か書いてきた。過去に宅建主任者や旅行業務取扱主任者資格を取得して、今も税理士試験の勉強のため法令の条文を書いて覚えるという作業を日々やっている。その中で許可だ認可だ承認だ、と似たような言葉が登場するが、当然法律上定義して使われている言葉なので混同してはならない。それぞれどのような違いがあるのか、自分用のメモとしてこの記事をまとめておく。


例えば酒税法第8条にはこのような規定がある。

酒母等の製造免許)
第八条  酒母又はもろみを製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造場ごとに、製造免許を受けなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、この限りでない。

(中略)

三  アルコール事業法 第三条第一項 又は同法第四条第三号 の規定によりアルコールの製造の許可又は承認を受けた者が、当該アルコールの製造の用に供するため、同法第二条第二項 に規定する酒母又は同条第三項 に規定するもろみを製造する場合

この条文中に登場する免許、許可、承認はそれぞれどう違うのか?国語辞典を引いて載っている日本語の意味以上に、法律的には特別な意味合いがあるはずだ。

許認可行政

知恵蔵2014の解説

日本の行政省庁は、法令用語にいう許可、認可、免許、承認、指定、確認、検査、検定、届出、証明、認証など、多数の規制権限を有している。こうした規制行政を総称して許認可行政という。許認可行政は、経済的活動の公正の確保や国民の権利の保護、生活上の安全の確保などの目的を掲げて展開されている。したがって、例えば電気通信事業を営むには免許を必要とする。あるいは個々の事業に従事するために医師、調理師などの免許が必要とされている。また、製品の規格を定め安全を確保するために、検査、検定や認証が行われている。2003年3月31日現在で、こうした許認可権限は、1万1007件を数える。

http://kotobank.jp/word/%E8%A8%B1%E8%AA%8D%E5%8F%AF%E8%A1%8C%E6%94%BF

許可、認可、免許、承認、指定……、実にたくさんの許認可権限がある。これらの許認可なしにその行為を行ってしまうと違法行為となる。日本国憲法第22条第1項には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」とあり、飲食店を開業するのも、医者になるのも、本来誰が行っても自由である。しかし全く規制を行わないでいると、その職業を行うのに十分な能力のない者や、倫理的に問題のある者が営業を行って、安全性に問題が生じる恐れがある。そこで一定の者にだけ国が許認可を与える。これが憲法22条の謂う「公共の福祉」であり、国が許認可権限を持つことを正当化する根拠である。

一方で、許認可権限を持つ行政機関には権威が生まれ、先に参入した業者は既得権益を持つことになり、自由な経済活動や健全性の妨げの原因ともなる。具体的には、パチンコや性風俗産業等の風俗営業に対する警察の権限や、タクシーの営業許可(一般乗用旅客自動車運送事業)や、郵便事業の許可(一般信書便事業)などである。


許認可が必要な主な業種

先に述べたように1万種以上ある許認可の極一部の具体的な例を以下に示す。

飲食店営業 許可
食料品等販売業 許可
理容業・美容業 届出
クリーニング業・コインランドリー 届出
旅館業・公衆浴場 許可
酒類製造・販売 免許
ペットショップ・トリマー 登録
運送業 許可
風俗営業 許可
リサイクルショップ・古本屋 許可
中古車販売 許可
深夜酒類提供飲食店営業 届出
警備業 認定
貸金業 登録
建設業 許可
解体工事業 登録
電気工事業 登録・通知
清掃業 登録
不動産業(宅建業) 免許
旅行業 登録
時間貸駐車場 届出
ガソリンスタンド 登録
介護事業 指定
産業廃棄物処理業 許可
認可外保健施設 届出
労働者派遣業   許可・届出
薬局 許可
倉庫業  登録 

http://www.legends-office.com/seturitu/05.html

面白いのは、許可権者(申請の提出先)がなかなかわかりにくいものがあること。

飲食店営業許可は保健所で、深夜酒類提供飲食店営業の届出は都道府県公安委員会(警察署)(風営法のくくり)。ダンスホール、パチンコ、ゲームセンターは風営法のくくりで警察署だが、興行場営業許可(映画館や劇場)は保健所。旅行業の登録は観光庁長官(又は都道府県知事)で、旅館業の許可は保健所。酒類の製造免許は、食品衛生を担当する保健所ではなく、酒税(国税)を管轄する税務署である。たばこ小売販売業許可は財務大臣(財務局長)の管轄だが、JTを通して出すそうだ。古物商の営業許可は盗品捜査の関係で都道府県公安委員会(警察署)。時間貸駐車場の届出は駐車場法に基づき市町村の担当部署。ガソリンスタンドの届出は揮発油等の品質の確保等に関する法律に基づき、地方経済産業局長、又は経済産業大臣



▲国の行政機関。出典:国の政策(政策情報ポータル) | 首相官邸ホームページ

許認可(行政行為)の種類

行政書士の解説等では、「許可、認可、免許、登録、届出の5種類がある。」と説明されていることが多く、それぞれの解説を読むと一応納得できるのだが、では許可と認可と免許は実務的にどう違うのか、明解に説明しているものは見つけられなかった。行政法学の資料では、行政行為と総称されるが、それらの違いを包括的、網羅的に説明しているものは見つけられなかった。

だが考えてみれば当然で、それぞれの所轄官庁が、その分野に個別の業法で必要な範囲を定義しているのであって、一つの法律の中でこれらの言葉を全部使っているものはおそらくないだろう。関連する法律の間で整合性が取れていればいいのであって、全く異分野の間ではその必要性もない。タクシーの営業許可と、大学の設置認可と、第一種鉄道事業の免許の間で、どれが上位であるかという概念はないし、どれを取得するのが難しいか比較しても意味がない。

以下に、一応の概括的な定義を試みる。

許可

所轄行政機関に書類を提出し、審査を受けて成立する。行政機関は許可をするかどうか判断する裁量権がある。

許可とは、行政法上ある行為が一般的に禁止されている場合、それを解除し適法に行為できるようにする行政行為。例えば飲食店営業の許可、自動車運転免許がそれにあたる。

http://kotobank.jp/word/%E8%A8%B1%E5%8F%AF%E3%81%A8%E8%AA%8D%E5%8F%AF

 許可は、認可とは異なり、申請を受けた行政官庁に裁量(行政官庁のもつ自由な判断の余地)が認められ、仮に申請自体に不備がなかったとしても申請が拒否される(不許可となる)場合がある点に特徴があります。

http://lawinfo.crestec.jp/joureikun/column/column_14-1.html

認可

所轄行政機関に書類を提出し、審査を受けて成立する。行政機関は要件を満たしていたら認可しなければならない。

認可は、行政庁が第三者の行為を補充してその法律上の効力を完成させる行政行為。例えば銀行の合併の認可、保育所の設立の認可など。

http://kotobank.jp/word/%E8%A8%B1%E5%8F%AF%E3%81%A8%E8%AA%8D%E5%8F%AF

 例えば、公共料金の値上げの際に必要な認可や、建築協定の認可、緑化協定の認可などがこれに当たります。また、農地の売買等に関して必要な農業委員会の許可(農地法第3条第1項)も、法律の文言上は「許可」となってはいますが、(1)の許可とは異なり、ここでいう認可の性質を有するものです。

 認可は、前述の許可とは異なり、適法な申請がなされ、かつ、当該申請内容が要件を充たしたものである限り、必ず当該申請が認容される(認可がなされる)という点に特徴があります。

http://lawinfo.crestec.jp/joureikun/column/column_14-1.html

免許

特定の資格を持った者に権利や地位を与えるもの。行政法学の分類では、「許可」か「特許」のどちらかのこと。

ある特定の者に対し,その者が一定の行為または活動をなしうる旨を定める行政庁の行為をさして,しばしば免許の語が用いられるが,学問上の概念ではない。法令上,免許と呼ばれるもののうちには,医師免許(医師法2条),運転免許(道路交通法84条),酒類製造免許(酒税法7条)および酒類販売業免許(9条)などのように,行政法学でいう許可,つまり一般的禁止を個別に解除するにとどまるものもあり,また,地方鉄道業の免許(地方鉄道法12条)や漁業免許(漁業法10条)などのように,行政法学上の特許の性質をもち,相手方に一定の独占の権利を生ぜしめるものもある。

http://kotobank.jp/word/%E5%85%8D%E8%A8%B1

特許

行政法学上の理論にみる概念としての特許は,人の自然の自由に属さない能力を特定人に対して賦与することを内容とする行政庁の行為,と定義され,法人の設立許可,外国人の帰化の許可,公企業経営権の特許,公物占用権の特許などを含む。

http://kotobank.jp/word/%E7%89%B9%E8%A8%B1?dic=sekaidaihyakka

特許は、前述の許可と同様、申請を受けた行政官庁に裁量が認められるという点に特徴を有しますが、その裁量が認められる幅は許可よりも更に広いといわれています。このような裁量の幅の違いは、許可が「国民が本来的には自由になしうる行為を公益上の理由から禁止し、一定の場合にこれを解除する」という性質を持つのに対し、特許が「国民が本来有していない特別の権利や地位などを新たに与える」という性質を持っているという点に由来するものと考えられます。

http://lawinfo.crestec.jp/joureikun/column/column_14-1.html

登録

所轄行政機関に書類を提出し、帳簿に登録されれば成立する。

届出

基本的に所轄行政機関に書類を提出するだけで一方的に成立する。

届出とは、ある者が特定の行為を行うにあたって、あらかじめ行政官庁に対して一定の事項を通知する行為であって、かつ、そのことが法令で義務づけられている場合をいい、例えば、クリーニング業法上の営業者の届出などがこれにあたります。

 届出は、許可、認可及び特許とは異なり、それが行政官庁に到達することをもって足り、行政官庁側の諾否の判断を経る必要がないという点に特徴があります。

http://lawinfo.crestec.jp/joureikun/column/column_14-1.html


上記のように、法律条文上は「許可」と記述してあっても性質的に「認可」であるものもあり、法文制定者が明確に違いを意識せず設定したのだろう。また、下記に示すタクシー業界の例では、以前の認可制は国土交通省に裁量があり、許可制は要件が整っていれば誰でも出来るようになったとあるので、上で見た定義とは全く逆である。法学上の定義など関係なく用語を制定したのだろう。

平成14年2月1日付けで施行された道路運送法の改正に伴い、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)は許可制度になり、資格要件が整っていれば誰でも、いつでもタクシー業を経営できるようになりました。しかし、事業計画(営業所や車庫等)については、基準がゆるくなったのではなく、運行管理者の資格要件などは国家試験制度となり、むしろ厳しくなりました。
 従来はその事業区域内の需給状況を国土交通省が勘案して、認可するかどうかを決めていたので、殆ど新しい会社は作れませんでした。そのため新しいサービスや運賃競争などは起こりませんでした。

http://www.weblio.jp/content/%E5%96%B6%E6%A5%AD%E8%A8%B1%E5%8F%AF


2012年に田中眞紀子文科大臣が大学設置の不認可を言い出して一悶着あったが、あれも実際には認可まで何年も文科省と折衝を重ねているはずで、要件を満たせば当然に認可されると一概に言えるものでもないだろう。


私が自動車学校で教習を受けていたときに、「自動車は基本的に運転してはいけないものです。運転を誤れば凶器となるもので、、、」と教えられたのだけど、あれは法学的にもまっとうな説明だった。なぜなら許可(運転免許)とは、一般に法で禁止した行為を行政機関が特定の者に限って解除することを言うのだから。