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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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サッポロ「極ZERO」、異例の税率区分変更を酒税法から考える

法律 経営・会計 租税

サッポロ「極ZERO」国税庁の打診を受け異例の税率区分変更へ

サッポロビールが新ジャンル商品(リキュール(発泡性)①)として去年6月から発売していた「極ZERO」が、国税庁の打診を受け、低率課税である「リキュール(発泡性)①」の区分に該当しない可能性を発表した。7月から発泡酒として再発売するが、現在までに販売された商品についてこの区分が認められないこととなると、修正申告が必要となる。発泡酒として再発売するということは、「リキュール(発泡性)①」でなく「発泡酒」であることを事実上認めたのではないかと思う。しかし、サッポロの談ではあくまでも「リキュール(発泡性)①」に該当するものと認識しているが、仮に認められなかった場合修正に伴う延滞税の額が膨らむことを懸念して自主的に修正申告を行うとしている。

(前略)今年1月に国税当局から、適用税率の区分を確認するために製造方法の情報提供を要請され、サッポロでも自主的に検証を続けてきた。現在も検証作業を行っているが、「酒税法に関する法令解釈に沿った形での事実確認には至っていない」という。ただ、時間が経過するほど延滞税が膨らむため、検証作業で結論は出ていないものの、自主的な修正申告を行うことを決めた。

同社では、当初の税率区分通りの「リキュール(発泡性)1」に該当すると認識しているという。このため、今後も自主的な検証作業を続け、確認できた場合には、税金還付のための更正申請を行うことも念頭に置いている。


サッポロHDが追加酒税116億円を特損計上、「極ZERO」問題で | Reuters


 そのような中、国税当局より「極ZERO」の税率適用区分に関連し、製造方法に関する情報提供の要請がありました。当社は、「極ZERO」は酒税法上「リキュール(発泡性)①」に該当するものと認識していますが、当局の酒税法に関する法令解釈を確認しこれに沿った上で、当局から要請された資料、データの自主検証を行ってきました。
 
 現在もその検証作業を慎重に進めていますが、当局の酒税法に関する法令解釈に沿った形での事実確認が現時点ではできておらず、今後の検証の結果、「極ZERO」が「リキュール(発泡性)①」に該当しないこととなった場合(注3)、多くのお客様、お取引先様にご迷惑をおかけすることになります。
 
ついては、今般「リキュール(発泡性)①」として販売している現行「極ZERO」を自主的に一旦終売することとし、お客様の期待する「プリン体0.00」「糖質0」というコアバリューを今後も維持していくために、製造方法を一部見直し「発泡酒(麦芽使用率25%未満)」として再発売します。
「サッポロ 極ZERO(リキュール(発泡性)①)」5月下旬製造分をもって終売(2014年6月4日) | ニュースリリース | 会社情報 | サッポロビール

6月4日の会見でサッポロビールの尾賀真城社長は、「『極ZERO』は現行の税率区分(発泡酒にスピリッツを加えたもの)に該当するものと認識している。ただ、今後の検証の結果、該当しないと判明した場合、多くのお客様やお取引様にご迷惑をおかけすることになるため、自主的に終売を決定した」と説明した。

 会見では、自主検証のポイントや、具体的に何が問題なのかについて、繰り返し質問が出た。しかしながら、「原料となる発泡酒の製造方法で、国税当局から照会を受けている。それ以上は製品開発上の営業秘密のため説明できない」(時松浩取締役)と言うばかりだった。

(中略)

翌5日、サッポロHDの株価は前日比で6.6%下落、30円安の426円となった。
サッポロ、「極ZERO」販売終了の波紋(東洋経済オンライン) - ニュース・コラム - Yahoo!ファイナンス

サッポロの株価日足チャートを以下に示すが、会社の会見を受け5日に急落している。116億円の特損計上は、今期利益予想の50億円を吹き飛ばして赤字転落となるインパクトを持つもので当然の反応だが、株価はその直前に上昇を見せており、空売りをかけるには絶好のタイミングという、怪しさの伴う動きである。


サッポロホールディングス(株)【2501】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス


酒税のしくみから解説

酒税は消費税と同じ性格で、消費者が払った金額のうち酒税に相当する金額を製造者(サッポロ)が税務署に納付することになっている。本来は製造者からの出荷の時点で商品価格に反映されているのだが、「発泡酒」より低率である「リキュール(発泡性)①」で計算して既に売ってしまったものを、消費者から新たに回収するわけにいかないので、この分の差額は製造者が全て負担することになる。この分の差額が約100億円、プラス16億円が延滞税ということだ。


酒税の税率は以下に示す。

どの酒がどの区分に属するのか一般の人には分かりにくいと思うので、判定基準を後の項でスライドで図解している。

新ジャンル戦争(低課税の新商品を開発するビールメーカーと税収増を狙う国税庁の戦いの歴史)

(この項は後日詳しく書くかもしれません。)

酒税の税率は、概ねアルコール分1度で1万円となるように設定されている。焼酎であれば、25度で25万円、30度で30万円といった具合である。ウイスキーは37度未満でも最低37万円であったり、清酒は大体15%程度だが固定で12万円であったりと、品目により異なる。

これを見ると5%程度であるビールが22万円と高く設定されているのがわかる。これは国内で最も消費されている酒類がビールであることによるものだろう。平成24年度の酒類の国内消費数量8,538千キロリットル中、ビールは2,685千キロリットルである。他は、清酒593、しょうちゅうは甲類乙類合わせて908、果実酒は321、ウイスキーは99等。これでもビールは平成6年の7,057から減ってきており、代わりに発泡酒、ついで「第3のビール」(品目上は、リキュール、その他の醸造酒に含まれる。)が伸びている。*1

このようにビールの税率は高いので、メーカーでは、ビールの定義に当てはまらない(=ビールほど高い税金がかからない)が、ビールのような味がする酒を造ろうと開発を行ってきた。これが発泡酒や「第3のビール」と呼ばれる、ビール系飲料である。これらビール系飲料の歴史は低課税の新商品を開発するビールメーカーと税収増を狙う国税庁の戦いの歴史であった。



平成6年(1994年)10月、サントリーが麦芽比率を65%に抑えビールの定義に該当しない「ホップス」を発売した。これが発泡酒の始まりである。これに国税庁は1996年、早速、発泡酒の税率を引き上げている。それでもビールより税率の低い発泡酒はビールに変わる酒として売上を伸ばしていたが、平成15年(2003年)の改正で発泡酒の税金がさらに引き上げられた。メーカーは新たな道を選ぶことにした。原料に麦芽を使用しないことや、発泡酒に別の酒を混ぜることで、ビールや発泡酒の定義を外れながら、味はビールに似ている酒。「第3のビール」の開発に乗り出すのである。



ビールでも発泡酒でもない「第3のビール」を開発したメーカー。国税庁は再び「第3のビール」をターゲットにして税率を高くする改正を行おうとした。2006年の改正では、それまでの酒類の分類を整理し、大きく4つに分類することとした。醸造酒類、蒸留酒類、混成種類、そしてビール系飲料等を包括的に含めた発泡性酒類である。さすがにこのときはメーカーも怒って訴訟になりそうになったため、その時点までに発売しているメーカーの製法と原料のみを政令で指定し、低い税率を適用させることとした(2006年)。

現行の酒税法で、「その他の醸造酒(その他の発泡性)」「リキュール(その他の発泡性)」に分類されるビール系飲料のうち、政令で指定された特定の原料を使用しているもののみに8万円の税率が適用され、「その他の醸造酒(発泡性)①」「リキュール(発泡性)①」と表記される。①は丸囲みの1で、法第23条《税率》第2項第3号かっこ書きに規定する「ホップ又は財務省令で定める苦味料を原料の一部とした酒類で同号イ又はロに該当するもの」を意味する。(①が機種依存文字で正しく表示されていない可能性がある。)*2「その他の発泡性酒類①」に適用される8万円は、みりんを除いた酒類では最も安くなっている。



「その他の醸造酒(発泡性)①」「リキュール(発泡性)①」と定義されるものは、登場時はそれぞれ「第3のビール」「第4のビール」とマスコミで呼ばれていたようだが、最近ではこれら二つを合わせて「第3のビール」と呼ぶようになってきたらしい。メーカーでは「新ジャンル」と呼称している。

それぞれを区別するため、以下では「第3のビール」「第4のビール」と分けて呼ぶこととする。

「極ZERO」の税率区分について

ヒール系飲料の判定の順序と基準をスライドで図解してみた。「第3のビール」「第4のビール」であるためには、少なくとも上位区分であるビール、発泡酒に該当しないことが必要である。その上で政令で指定された特定の原料・製法である場合のみ「その他の発泡性酒類①」の8万円が適用される。

ビール系飲料(発泡性酒類)の酒税の税率区分早見表(1キロリットル当り)


税率は酒税法では製造数量1キロリットルを基準に定められている。350ミリリットル当りに直すと、220,000円→77円、80,000円→28円となる。


極ZEROについてサッポロは、従来から「リキュール(発泡性)①」=「第4のビール」であるとしてきた。国税庁から横やりが入ったということは、「第4のビール」として認められる政令で指定された特定の原料・製法に該当しなかったか、又は発泡酒の定義に該当してしまったかのどちらかである。


極ZEROの、従来の原材料表記と、リニュアールして新発売される原材料表記は以下の通りである。

発泡酒(麦芽・ホップ・大麦・苦味料・カラメル色素・スピリッツ・水溶性食物繊維・エンドウたんぱく抽出物・香料・酸味料・安定剤(アルギン酸エステル)・甘味料(アセスルファムK))・スピリッツ(大麦)

麦芽・ホップ・大麦・苦味料・カラメル色素・スピリッツ・水溶性食物繊維・エンドウたんぱく抽出物・香料・酸味料・安定剤(アルギン酸エステル)・甘味料(アセスルファムK)

具体的には、発泡酒にスピリッツを加えた後に発酵が生じていた可能性(その場合リキュールとならない)や、発泡酒の原料になっているスピリッツの原料が麦・麦芽由来のスピリッツであった可能性(その場合、発泡酒の定義を満たさず、それにスピリッツを混ぜても特定の製法に該当しない)、等が考えられる。

「原料となる発泡酒の製造方法で、国税当局から照会を受けている。それ以上は製品開発上の営業秘密のため説明できない」というコメントから推測するに、後者が当てはまるのではないかと予想するが、断定はできない。エキス分が2度に達していない等他の要件を満たしていなかったという可能性もある。


ビール系飲料は、制定の経緯から区分が複雑なものになっている上、製法の特許も絡み恐らく製法自体も複雑になっていてどの時点で原料を投入したか、発酵が生じたか、等が簡単に判別できないようになっているのではないか。正直自分で書いていて、何が該当して何が該当しないのかよくわからなくなってくる。


発泡酒として再発売されたサッポロ「極ZERO」

参考文献

酒全般に関する所轄行政官庁は、財務省(←国税庁←税務署)である。食品衛生を取り扱う厚生労働省でも、農林水産省でもなく、財務省であるのは、酒が古くから国の租税収入源として重要な地位を占めてきたことを表していると言えそうだ。国税庁のサイトでは統計資料も充実している。

この本は、財務省所管の独立行政法人、酒類総合研究所が公開している「お酒のはなし」(情報誌・上記のサイトで無料でpdf公開されている。)を再編集したもの。様々な種類の酒の製造方法や歴史等が、写真や図表入りでコンパクトにまとめられているので、手元に置いておくのにいい。