私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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第18回鉄道シンポジウムに行ってきた

昨日は中ノ島のリーガロイヤルにシンポジウムを聞きに行ってきた。このシンポジウムは鉄道の日記念事業として毎年全国持ち回りで開催されているらしい。近畿大学教授の基調講演は海外の鉄道施策などあまり知らなかった話も多く、パネルディスカッションでも、これからの鉄道をどう整備していくべきか観光立国にも関連して有意義な話がされた。傾聴に値する話も多く時間が全然足りなくて最後も無理やり押し込めてまとめたが、もっと掘り下げて聞きたい話があった。私自身の鉄道への愛着や興味がどういった点に向いているのか考えていたのだが、今回の話を聞いて一本の繋がりを見つけたような気がする。今後の鉄道への関わり方を考える上で示唆に富んだ気づきをもらいとても満足した。

参加者は国や地方の行政関係者、鉄道事業者を中心に、鉄道ファンもそこそこ来ていたようだ。会場の後ろのほうまで椅子を追加して入れたようでいっぱいだった。

タイトル
第18回「鉄道シンポジウム」
テーマ
「鉄道による都市・地域の活性化と鉄道ネットワーク・サービスの高度化」〜成熟社会、環境新時代における鉄道のあり方と果たす役割〜
日時
10月30日(金)14:00〜17:00
会場
リーガロイヤルホテル光琳の間」
主催
国土交通省近畿運輸局鉄道建設・運輸施設整備支援機構


今どき主催側からweb上に情報が一切上がっていないというあたりが非常に残念だ。以下、会場で取ったメモを見ながら論者の主要な発言をまとめてみる。

が、これから羽田空港諸々の見学で3日間程東京に出かけるので更新が遅くなるかも。

第18回鉄道シンポジウム 講演抄録

主催者挨拶

原 善信(近畿運輸局長)
石川 裕己(鉄道建設・運輸施設整備支援機構理事長)
 (略称:鉄道・運輸機構 ←日本鉄道建設公団運輸施設整備事業団の業務を承継。鉄道新線や整備新幹線の建設やその助成を行う。)

来賓挨拶

下妻 博(関西経済連合会会長)

(冒頭の前原国交相からのメッセージを受けて)「CO2、25%削減などという話はあまり気に入らない。」(今回は国内の鉄道整備がテーマであるが、と前置きの上)「国外への鉄道輸出を、次世代のための国家戦略として計画を立てて行う必要がある。それは原発しかり。」「低炭素社会実現のためにもモーダルシフトを進めなくてはいけない。高速道路無料化なんてことは逆行。無料で収益を取らないということならいっそのこと逆転の発想をもってうんと高くして誰も乗らないくらいにしてもらいたい。」

住友金属の方であると仰っていたが、いきなりがつんと批判から入ったのが印象大。産業界からの要望を強く主張しつつも、面白い話をする人だった。

基調報告

斎藤 峻彦(近畿大学経営学部教授)

“ゆたかさのグレードアップと鉄道政策の新しい課題”
「ゆたかさのグレードアップ」とは、快適・便利な交通 → 安心・安全・サスティナブル(バリアフリー環境保全、)な交通への転換

  • 先進諸外国では都市内交通は儲からないのが常識。資本・運営に公的補助が与えられている。フランチャイズ競争入札制で優秀な交通企業を育成することが悩み。
  • 日本の私鉄の優秀性。資本・運営を自分で賄った上、利益まで出している。しかし私企業に過大な期待の側面も。

わが国が取り組むべき課題

  • “公”と”民”の新しい関係の構築
  • “公(中央)”と”公(地域)”の機能・責任分担
  • 交通政策財源の充実と分配システムの再編
    • 魅力ある都市づくりと公共交通へのモーダルシフト
    • 地域環境の改善・温室効果ガス抑制の各種施策
    • 高齢社会に備えた国民・住民のモビリティ確保など
パネルディスカッション

“都市再生・まちづくりと鉄道ネットワーク・サービスの強化”
コーディネーター
斎藤 峻彦(近畿大学経営学部教授)
パネリスト
坂井 信也(関西鉄道協会会長・阪神電気鉄道(株)代表取締役社長)
辻本 泰弘(北近畿タンゴ鉄道(株)代表取締役社長)
横江 友則((株)スルッとKANSAI代表取締役副社長)
飯田 克弘(大阪大学大学院光学研究科准教授)
川越 一((株)ロイヤルホテル代表取締役社長)
箕田 幹((財)大阪市都市工学情報センター理事長・元大阪市計画調整局長)

坂井「なんば線開業の効果。三宮駅の調査では利用人員8%増、一日あたり6000人ほど。近鉄奈良線と繋がれたことにより新たな文化交流の機会が誕生。」
辻本「KTRの紹介。国鉄転換の宮津線と新設の宮福線を運営し営業キロ114km、関西圏では4位。観光による季節需要が多く夏冬型と呼んでいる。」「地方鉄道を取り巻く問題として(1)少子高齢化(2)モーターリゼーション(3)地場産業の低下があり、今期は(4)ETC割引の影響と(5)冷夏の影響あった」「国鉄からの転換直後は地元に『乗って残そう』という機運もあったが低下している。」「そんな中、KTRではマンスリー企画として毎月、新規の企画の施策を行っている。『第三の定期券』=無記名定期券、『ファミリー得とくクーポン』=夏休みの子どもを無料に、『こども鉄道きょうしつ』、トレインアテンダント等。」「ネットの活用策として、沿線住民から『ブログ駅長』を募集し情報発信してもらっている。」
川越「京阪中之島線開業(→ホテルに直結)の効果。宴会利用40~50件UP。料飲部門は開業に合わせキャンペーンを行ったこともありUP。宿泊は景気の影響を受け下がっている。京都の観光客に利用してもらえないか旅行会社に営業をかけているが芳しくない。」
飯田「交通バリアフリー法の施行で鉄道の利用環境(車いす対応設備等)は大幅に改善されてきた。」「乗換動線を意識した設計が必要」「『等価時間』の調査(平面を歩いた場合に比較し条件を与えた場合でどのように感じるかという意識調査)で、壮年(2、30代)男性は待ちに対する心理的抵抗が約3倍。エスカレーターを待つくらいなら歩いていくという傾向。高齢者では上り階段より下り階段に対して避けたいと思っている。」
横江「スルッと関西導入時に『初乗りチェック』が問題となった。乗車時に初乗り分のカード残額がないと改札を通れないという制限、東京ではクレームはなかったが、関西人気質なのか非難轟々。鉄道営業法の条文『乗車券持タザル者乗ルベカラズ』に由来するものだが、カード用規定に特別な条項を作ることで残額10円でも乗れるようにした。これが後の完全後払い方式であるPitapaに繋がっていく。」「Pitapaは利用者に会社間の違いを意識することなく利用してもらえるようにした仕組み。ポイントを貯めることで割引がされるようにもした。駅前で買い物したり駐車場を利用したりすると電車がただで乗れた、と思ってもらう効果がある。」「電車・バスを都市のエレベーターにしたいと考えている。エレベーターでは利用料を取られるようなことはない。」「他地域からの旅行者向けに『関西3daysチケット』や、韓国では『LOTTE Pitapa』を発売している。韓国でクレジットカードを発行して後でウォン立てで請求するもの。外国からの訪問客にとって(会社間の違いが絡む複雑な)切符を買って電車に乗るのは大変だが、Pitapaが外国の交通を簡単に利用できるように、ハードルを低くした。」「鉄道利用の統計上の区分としてこれまでは『定期』『定期外』で行ってきたが、『通勤・通学』『観光』という区分への変更を提案したい。日常的に利用する以外の移動は全て観光という定義。」
(発言者失念)「回廊型観光への対応。従来のマスツーリズムに対するもので、現地の生活を知り、現地に馴染む形の旅行が求められている。そこでは発信者側(観光事業者等)の情報よりも、受け手側(観光者)のネット上の口コミ効果などが有益となる。訪れた場所の情報をナビゲーション端末に表示できるような仕組みが欲しい。例えばここにiPhoneの『セカイカメラ』というアプリがある。今ここで写した映像に、過去に誰かがここで残した発言が表示される。」
「案内サインの充実は、観光立国にとって重要。乗り換え抵抗を低くすること=迷わず行けること。街歩きをしやすいように案内板の設置も。」
飯田「鉄道と、バス・車・徒歩間の相互利用を考えて乗り換えの利便性を最大限に設計した駅の事例紹介。Warwick Station」
(発言者失念)「大阪駅には各鉄道事業者や自治体が設置した案内所が全部で20近くある。ここらで提供されている情報は共通化を図るべき。外国人にもわかりやすい遠くから目立つ表示を。」
「(写真を表示しながら)駅構内のサインも、出口は黄色等のおおまかな法則はあるが、各事業者で独自のデザイン。広告とサインも混ざり合ってわかりにくくなっているため見やすくする必要がある。」
横江「券売機を使わなくていいようにしたのが『スルッと関西』で、精算機も使わなくていいようにしたのが『Pitapa』。これは究極のバリアフリーだと思っている。」「鉄道・バスの連携を強化して、ランドマーク検索システムを作りたい。目的地を『金閣寺』と入れると、何線に乗ってどこの出口から出て何番のバス停から何号系統に乗ってとガイドしてくれるような。」
川越「国際化・高齢化への対応が急務である。ピクトグラムを活用したい。大阪と梅田、天王寺と阿部野橋などのようにターミナル駅名が異なるものの統一。外国人旅行者にとってReserveシートのある・なし、特急料金の要・不要の違いもわかりにくい。荷物置き場も増やす必要がある。」
箕田「鉄道とまちづくりの一体化。これまでの地下街開発等では駅の部分は鉄道事業者、その上の施設や道路建設は行政というように別れてやってきた。」


ここまでも、なんとか予定時間に押し込めようと各氏が発言を簡潔に切り上げるよう努力してきたが、15分ばかりオーバー。最後、斎藤先生が大急ぎでまとめた。


※このテキストは私が会場でとったメモを基に新たに書き起こしています。抜粋箇所の選択は私の判断により、論旨を変えない程度に再構成している箇所があります。そのため一部内容に誤りを含む可能性があります。掲載に問題がありましたら、お手数ですがご連絡ください。


案内サインの整備や利用しやすい駅・街づくりは、私の興味のある分野でこの方面に話が膨らむとは予想外だったところもありとても面白く聞いた。

ナビゲーションシステムについては、既存の携帯サイトで提供されているサービスがかなり近いところまでいっているように思う。Google mapのルート検索とかNAVITIMEとか。ほっといても数年以内にそのレベルまで到達しそうな気がする。ただ現状ではおそらく鉄道事業者は時刻表データ(時刻表会社を通して)や運行情報の提供くらいしか関わっていないと思うので、直で提携してサイト上で駅構内マップへのアクセスを可能にしたり、地域の団体や観光協会と共同で案内サインにICタグを埋め込んで誘導を可能にしたりということも考えて欲しい。自治体が提供する災害時避難所情報だとか、ショッピング・グルメ・イベント情報なんかにも相互乗入できるようにしたらいいと思う。

また話題にはならなかったが、一時代の殺人的通勤ラッシュは緩和してきているとはいえ、日本(東京)の過度の混雑が当たり前の光景として見られていることは問題であると私は考える。あのような非人道的で、痴漢や痴漢冤罪、暴力行為等犯罪の温床となるような状況が看過されているのは異常なことだ。混雑緩和に向けての対策、特にICカードシステムを利用した時差運賃の導入については具体的に検討して欲しいと思う。

過疎地域の交通ネットワーク維持はこれからますます大変そうで真剣に考えないといけない。PFI、PPPによる鉄道整備、海外交通事情等、個人的に勉強が必要だと感じた。



満員電車について考える - 私は何を知っているか?