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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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新たに相続時精算課税の適用を受けようとする年に贈与者等が死亡した場合の相続時精算課税選択届出書の提出先等について

法律 租税

相続税法の理解を深めるために作成したまとめ。

概要

贈与税の計算方式には、「暦年課税」方式と「相続時精算課税」方式がある。それぞれのメリット・デメリット等についてここで詳しく説明することはしない。原則的方式は暦年課税であり、相続時精算課税を選択するには、初めて適用を受けようとする年分の贈与税の申告書に添えて、相続時精算課税選択届出書を提出する必要がある。この届出書を提出した以後の年分のその贈与者からの贈与については、相続時精算課税となり、暦年課税に戻ることはできない。

然るに、相続時精算課税の適用を受けようと思い、贈与をした後に、その年中に贈与者が死亡してしまい相続が開始することとなった場合、又は受贈者が死亡した場合は、この相続時精算課税選択届出書の提出先や提出期限が通常と異なることとなるのであるが、この内容がテキストの解説を見てもいまいち頭に残らなかったので、ここで図表にまとめてみることにする。

新たに相続時精算課税の適用を受けようとする年に贈与者等が死亡した場合の相続時精算課税選択届出書の提出先等について

f:id:mark_temper:20160530030338p:plain

*1
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*3
*4


上記がこの表であるが、説明を加えてみる。一番左が通常の、相続時精算課税選択届出書を提出する際の手続規定である。受贈者が、受贈者の納税地の所轄税務署長に、贈与税の申告書に合わせて提出するのである。これが、その年に贈与者が死亡した場合には、提出先が贈与者の納税地の所轄税務署長となり、贈与者の死亡に係る相続税の申告期限がこれより先に到来する場合には、その日が期限となる。一方、同年に受贈者が死亡した場合であるが、届出書を提出するのは、死亡した受贈者の相続人・包括受遺者となり、受贈者の納税地の所轄税務署長に、受贈者の相続税の申告期限までに提出することとなるのである。


この変化が、これだけを見て覚えようとすると頭がこんがらがってくるのだが、(いや、もしかするとそのようなことになっているのは私の頭だけかもしれない。ここまでで十分理解できた方には以後は蛇足なので黙ってページを閉じてほしい。)これは、贈与税・相続税の申告書の提出先、提出期限と並べてみると、比較的すんなり理解できるようになる。というわけで次の項に続く。

具体例

当分更新しない。

贈与税・相続税の申告書の提出先、提出期限等

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贈与税の申告書の提出先は、受贈者の納税地の所轄税務署長、つまり、もらった側の住所地で行う。他方、相続税の申告書の提出先は、被相続人の納税地の所轄税務署長、つまり財産を与えた側の住所地で行う。なぜこのような違いを生じさせているかといえば、これが申告・納税(徴税)を行う上で合理的だからだ。即ち、贈与は複数の者から同年中に一人の者に贈与される場合が想定され(暦年課税)、実際に贈与税を申告・納付することとなる受贈者の住所地で行った方が都合が良い。一方、相続は、被相続人毎に相続税の計算を行うので、相続人等が複数いてそれぞれの住所地の税務署にバラバラに申告書を出されるより、被相続人の住所地に相続人等全員分の申告書をまとめて提出してもらったほうが税務署として都合が良いということだ。


あ。ちなみに上記は全て、贈与者/受贈者、被相続人/相続人が遠隔地に住んでいて、所轄税務署が異なる場合を想定している。それぞれの者が近所に住んでいて所轄税務署も同じならば、最初からどうでもいい規定だ。

具体例

当分更新しない。



翻って、先の相続時精算課税選択届出書の提出先を見てみると、これが合理的であることがよくわかる。通常、相続時精算課税に係る贈与の申告は、受贈者の納税地で行う。しかし贈与者が死亡した場合は、そのまま贈与者が被相続人となり、相続に移行することとなるので、被相続人の納税地に、被相続人の相続税の申告書と一緒に出してほしいということだ。もうわかると思うが、受贈者が死亡した場合には、受贈者が被相続人となるので、被相続人の相続人等が、被相続人の納税地に、被相続人の相続税の申告書と一緒に出してくれということなのだ。


贈与者等が死亡した場合に相続時精算課税選択届出書を提出する意味

ところで、相続時精算課税の適用を受けようと思っていた年に贈与者が死亡してしまい、相続が開始することとなった場合に、相続時精算課税選択届出書をあえて出す意味があるのだろうか。相続開始年分の被相続人からの贈与については、精算課税だろうと暦年課税だろうと、相続税の課税価格計算に取り込まれ、一体課税することとなる。贈与を受けた年に贈与者が死亡した場合の贈与税・相続税の課税関係を以下に示す。

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*5


相続税の計算上は同じことになるので、あえて暦年課税から精算課税に切り替える意味がないのではないかと思ったが、暦年課税からの生前贈与加算には適用がなく、相続時精算課税適用財産にだけ適用があるものを、2つ思いついた。最初の表に記入しておいたが、①債務控除と、②特定計画山林の相続税の課税価格の計算の特例だ。

一方、受贈者が死亡した場合だが、これははっきりと違いがある。暦年課税であれば、その年分の贈与税の計算をしておしまいだが、精算課税選択届出書を提出すれば、次に特定贈与者が死亡するまで、その受贈者の納税に係る権利・義務が、受贈者の相続人に承継されることになる。この結果が最終的にプラスになるかマイナスになるか、この時点では確定しないので、何年先になるかわからない相続税の申告義務が続くだけ面倒なことになるとは思う。もう一つメリットらしきものがあるとすれば、その受贈者が同年に他の贈与者からも多額の贈与を暦年課税で受けていた場合に、この贈与者からの贈与を精算課税にして暦年課税の計算から外すことで税率を下げることができるかもしれない。


以上、間違いがあればご指摘願いたい。


※本記事内で使用している相続税法の用語については、法令条文にできるだけ忠実になるよう抜き出しつつ、その意味を損ねない程度にわかりやすくなるよう言い換えをしています。
※ご自身の問題の解決にあたっては、税理士にご相談ください。

*1:相続税法 (相続時精算課税の選択) 第二十一条の九  贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の推定相続人(その贈与をした者の直系卑属である者のうちその年一月一日において二十歳以上であるものに限る。)であり、かつ、その贈与をした者が同日において六十歳以上の者である場合には、その贈与により財産を取得した者は、その贈与に係る財産について、この節の規定の適用を受けることができる。 2  前項の規定の適用を受けようとする者は、政令で定めるところにより、第二十八条第一項の期間内に前項に規定する贈与をした者からのその年中における贈与により取得した財産について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 3  前項の届出書に係る贈与をした者からの贈与により取得する財産については、当該届出書に係る年分以後、前節及びこの節の規定により、贈与税額を計算する。 4  その年一月一日において二十歳以上の者が同日において六十歳以上の者からの贈与により財産を取得した場合にその年の中途においてその者の養子となつたことその他の事由によりその者の推定相続人となつたとき(配偶者となつたときを除く。)には、推定相続人となつた時前にその者からの贈与により取得した財産については、第一項の規定の適用はないものとする。 5  第二項の届出書を提出した者(以下「相続時精算課税適用者」という。)が、その届出書に係る第一項の贈与をした者(以下「特定贈与者」という。)の推定相続人でなくなつた場合においても、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産については、第三項の規定の適用があるものとする。 6  相続時精算課税適用者は、第二項の届出書を撤回することができない。

*2:相続税法施行令 (相続時精算課税選択届出書の提出) 第五条  法第二十一条の九第二項 の規定による同項 に規定する届出書(以下「相続時精算課税選択届出書」という。)の提出は、同条第一項 の贈与をした者ごとに、法第二十八条第一項 の規定による申告書に添付して納税地の所轄税務署長にしなければならない。 2  相続時精算課税選択届出書には、贈与により財産を取得した者の戸籍の謄本その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない。 3  贈与をした者が年の中途において死亡した場合には、相続時精算課税選択届出書の提出は、第一項の規定にかかわらず、当該贈与をした者の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長にしなければならない。 4  前項に規定する場合に、同項の贈与に係る法第二十八条第一項 の規定による申告書の提出期限までに当該贈与をした者の死亡に係る法第二十七条第一項 の規定による申告書の提出期限(以下この項において「相続税の申告期限」という。)が到来するときは、相続時精算課税選択届出書の提出は、当該相続税の申告期限までにしなければならない。この場合において、当該贈与をした者の死亡に係る同条第一項 の規定による申告書を提出するときは、相続時精算課税選択届出書の提出は、当該申告書に添付してしなければならない。

*3:相続税法 第二十一条の十八  贈与により財産を取得した者(以下この条において「被相続人」という。)が第二十一条の九第一項の規定の適用を受けることができる場合に、当該被相続人が同条第二項の規定による同項の届出書の提出期限前に当該届出書を提出しないで死亡したときは、当該被相続人の相続人(当該贈与をした者を除く。以下この条において同じ。)は、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内(相続人が国税通則法第百十七条第二項 (納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に、政令で定めるところにより、当該届出書を当該被相続人の納税地の所轄税務署長に共同して提出することができる。 2  前項の規定により第二十一条の九第二項の届出書を提出した相続人は、被相続人が有することとなる同条第一項の規定の適用を受けることに伴う納税に係る権利又は義務を承継する。この場合において、前条第二項及び第三項の規定を準用する。 3  第一項の規定により第二十一条の九第二項の届出書を提出することができる被相続人の相続人が当該届出書を提出しないで死亡した場合には、前二項の規定を準用する。

*4:相続税法基本通達 (「相続時精算課税選択届出書」の提出先等) 21の9-2 贈与者が贈与をした年の中途において死亡した場合又は贈与により財産を取得した者が相続時精算課税選択届出書の提出期限前に当該相続時精算課税選択届出書を提出しないで死亡した場合において、当該贈与を受けた財産について相続時精算課税の適用を受けるために提出する相続時精算課税選択届出書の提出先及び提出期限は、次に掲げる場合に応じ、それぞれに掲げるところによるのであるから留意する。(平15課資2-1追加、平16課資2-6改正) 区分 提出先 提出期限 (1) 贈与者が贈与をした年の中途で死亡した場合 (注)相続時精算課税選択届出書に係る受贈財産については、贈与税の申告を要しないのであるから留意する。 1 受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限 (相続税法第28条第1項又は第2項に規定する期限)以前に当該贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限(同法第27条第1項又は第2項に規定する期限)が到来するとき 当該贈与者に係る相続税の納税地を所轄する税務署長 当該贈与者に係る相続税の申告書の提出期限 2 贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限 (相続税法第27条第1項又は第2項に規定する期限)前に受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限(同法第28条第1項又は第2項に規定する期限)が到来するとき 当該受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限 (2) 贈与により財産を取得した者が相続時精算課税選択届出書の提出期限前に当該届出書を提出しないで死亡した場合(上記(1)に該当する場合を除く。) 当該受贈者に係る贈与税の納税地を所轄する税務署長 当該受贈者に係る贈与税の申告書の提出期限

*5:相続税法基本通達 (相続開始の年に当該相続に係る被相続人から受けた贈与財産の価額) 11の2-5 相続又は遺贈によつて財産を取得した者がその相続開始の年において当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産(被相続人を特定贈与者とする相続時精算課税の適用を受ける財産を除く。)の価額については、法第21条の2第4項の規定により贈与税の課税価格に算入しないで相続税の課税価格に加算するのであるから留意する。  また、相続開始の年において特定贈与者である被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産の価額については、法第21条の10の規定により贈与税の課税価格に算入される(法第28条第4項の規定により当該財産については贈与税の申告を要しない。)とともに、法第21条の15第1項又は第21条の16第1項の規定により相続税の課税価格にも算入されることとなるのであるから留意する。(平15課資2-1改正) (注) 相続開始の年において当該相続に係る被相続人からの贈与により財産を取得した者が当該財産について相続時精算課税の適用を受けるためには、当該相続開始の年の前年以前の年分の贈与について法施行令第5条第1項に規定する「相続時精算課税選択届出書」(以下「相続時精算課税選択届出書」という。)を提出している場合を除き、当該相続時精算課税選択届出書を提出しなければならないのであるから留意する。