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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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橋下徹ほど民主主義を地道に実行しようとしている政治家は他にいないと思う理由

政治

先週大阪に行く機会があった。予定のない時間にどこへ行こうか迷ったが、大阪では橋下徹市長の辞職に伴う出直し選挙期間中であり、彼の演説を見に行ってみようと思った。その場でスマホで彼の選挙運動予定を調べてみると、難波パークスでの演説が一番近くであることがわかり、行ってみた。

大阪市長選23日、投開票

 大阪市長選は23日、投開票される。諸派地域政党大阪維新の会公認の前市長、橋下徹氏(44)(日本維新の会推薦)と新人3人の計4人が立候補しているが、維新以外の各政党は候補を擁立せず、異例の市長選となった。橋下氏が出馬し、投票率が60・92%だった前回選(2011年11月)に比べ、今回は期日前投票者数が20日時点で半数以下にとどまっている。

 選挙は、橋下氏が、議会の反発で行き詰まった「大阪都構想」の議論を進めるために民意を問うとして、市長を辞職し出直し選に臨んだ。しかし、市議会野党の自民、民主、公明、共産各党は「選挙には大義がない」として対立候補を擁立せず、橋下氏の「独り相撲」を浮き彫りにする戦略を採った。


大阪市長選23日、投開票 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

橋下徹の選挙

橋下氏は今回の選挙で大阪都構想を進める必要性を訴えている。街頭演説は、街頭タウンミーティングと称して、大きなパネルに都構想を具体的に示して演説。その後はその場で聴衆から質問を受けつけて、本人が一つ一つ答えている。一回1時間から2時間かけて選挙期間中ずっとこれを繰り返しているという。こんなに熱心に有権者との対話をしている政治家を、私は他に知らない。




そもそも彼がなぜ、こんなに熱心に市民に訴えているか考えてみたい。

いまだに新聞やテレビ等のメディアには、「説明が足りない」「都構想が何かわからない」という市民の声が載っている。おかしな話だ。大阪都構想は、昨日今日出てきた話ではなく、橋下氏が大阪府知事時代の2010年に言い始めたもので、府知事、市長を通して彼がずっと中心に据えてきた政策だ。


大阪都構想は何か。一言で言えば、大阪府大阪市の二重行政の無駄をなくすこと。

大阪市という自治体は、大都市のプライドでその規模に見合わない大きな開発を続けてきた結果借金まみれになってしまった。人口880万人である大阪府に、260万人*1大阪市が対抗して府が劇場を造れば市も劇場を造り、府が大学を造れば市も大学を造り。高度経済成長時代であれば税収はどんどん入ってきたので税金を使うのが仕事だった。だから大きなビル、博物館、レジャー施設、ホテルまで作って、でも全然使われないから破綻して多額の税金が投入されてきた。博物館など有意義な施設もあるが、大阪市以外の周辺自治体からの利用者の方が多いのに、費用負担は大阪市民260万人だけの負担で賄っている。だから大阪市民一人当たりの負債額が突出してしまっている。

何でも自分のところで抱え込む大阪市を解体して、受益者が広範に渡る大きなものはもっと広域で、地域に密着した小さなものは新設する特別区で、効率的な都市計画をやりましょうというのが大阪都構想。私が理解している橋下氏の主張はこういうことだ。演説の中でも「地下鉄や高速道路や港湾施設を大阪市が持つ必要がないじゃないですか」という発言があって、一瞬、ん?と思ったが、大阪市だけで抱える必要がなく大阪都で持てばいいという意味だろう。

メディアとの確執

都構想が市民に浸透しないのはメディアの責任でもある。メディア自身が賛成であれ、反対であれ、首長と議会与党がやろうとしている政策がどういうものであるか市民に解説して、判断は市民が下すというのが民主主義の基本であるはずだ。橋下氏も構想がまとまった後に住民投票をやると、明言している。

市民に直接説明するタウンミーティングはもう千回を超えているそうだ。メディアも取材に入っている。橋下氏は定例記者会見以外にも、退庁時にマスコミからの囲み取材で質問に答え、質問が出なくなるまで何十分でも何時間でも応じているという。府知事時代からずっと。常に知識をアップデートする能力と、並外れた体力がなければとても勤まらない仕事だ。疑問や批判があればいくらでも直接問う機会はある。

メディアはまともに取材をしていれば、都構想が何かはわかっているはずなのに、紙面に「都構想が何かわからない」と報じ続けるのは妨害に他ならない。

都構想が本当にいいものなのか悪いものなのか、本当に彼の言う通りにうまく進むかどうかはわからない。選挙中には誰だって自分に有利なことばかり言うので、彼の出した予算シミュレーションも疑ってみる必要がある。メディアに出てくる学者やコメンテーターに期待するのは、橋下氏の政策に具体的な批判を加えて、判断を下す材料を提供することなのに、レベルの低いコメントに終始している。


なぜこんなにずっと言い続けているのに、市民に伝わらないのか。議会でのやり取りもメディアを通して伝わらない、それならば選挙で直接訴えよう、という逡巡が、今回の選挙に打って出た判断の一つにあったのではないかと、彼の心中を慮る。


橋下徹のキャラクター

結局橋下氏はメディアに嫌われてしまっているので、最近では批判的な論調で書かれることが普通になってしまった。だがそれは政策面からの批判ではなく、彼の性格的なものに起因する感情的な反発であるように思う。

橋下氏のキャラクターは、テレビのコメンテーター時代に身につけた、インパクトのある発言やわかりやすい発言で衆目を集めるポピュリズム的な手法だ。twitterで攻撃的な発言を絨毯爆撃したり、自己に批判的な特定のメディアを名指しで取材させないとか、そういう手法が彼が嫌われた理由だろう。

だが池上彰氏が、日本の政治報道は予定調和的で切り込んだ質問をしないと批判するように、本来はメディアと政治家は丁々発止のやりとりがあってしかるべきだ。政治家の側も看過ならないおかしな報道をされたらそれを公の場で批判して当然だ。

それを、あえて政策の内容に深入りせず表面的な批判に止めたり、あるいは無視して話題にならないうちに過ぎ去るようにしたりするのは、今回の選挙で対立政党が候補を出さずに選挙を無意味なものにしたのと同様に、幼稚な対抗策に思える。



議会や組合に根回しして、役所にある利権を温存して、何事も滞りなく進むようにやってきた狡猾な政治家によって、税金が市民のわからないところで無駄に使われてきたのではないか。選挙のときだけ景気のいい話をして、適当なところで落ちをつけ、不利な質問はのらりくらりとかわし、大きな構造は何も変えず前例を踏襲。

選挙演説での彼の発言の受け売りになるが、大阪市は中学校での給食を実施していない全国5%の自治体であったが、前任の平松市長は選挙で公約してその後4年間給食は実施されず、予算がないから小中学校にクーラーを付ける代わりにゴーヤとヘチマを植えたそうだ。給食もクーラーも橋下市長が実現。その代わり高齢者の無料パスを削って、若い世代に振り向けた。求められているのは前例踏襲ではなく、今必要なところに必要な予算をつける判断。

以前に渡邊美樹氏について書いたが、彼の選挙運動についてさすがに警告ぐらい出るかと思っていたが、比例最後の方で当選してしまったら結局何もおとがめなしで、今も悠々と国会議員をやっている。国会で、自身が経営していた会社の従業員の待遇を追求されそうになって身を隠し、過ぎ去ってしまえばどこ吹く風だ。狡猾な政治家は予定調和で何もしない。

私は、政治家としての橋下氏を手放しに褒めるわけではない。慰安婦発言には酷いものがあったし、石原慎太郎参院選で組んだことは完全に方向性を誤ったと思う。だが表立って批判を浴びない代わりに、裏で利権をかすめ取る狡猾な政治家より、公の場でやっているだけ、健全で民主主義的であると思う。

改革派の人間は何かにつけ、憎まれ叩かれる。既存の枠組みで利益を得ている人の仕組みを破壊しようとするからだ。賢そうな振りをして、難しい問題です、とポーズをとって現状維持で居る方が有権者への受けもよかったりする。放っておいたら赤字垂れ流しで、悪化の一途なのに現状維持は及第点とされる。そして改革派の橋下は何も実績が無いなんて平気で言ったりする。交通局の改革や市職員の組合活動に対する取り組みなど着実に大阪市は改善していっているではないか。

なぜ今、選挙をやるのか


話を選挙に戻す。なぜ今、選挙をやる必要があったのか。この選挙自体が無意味だという批判もある。

肝心の大阪都構想が全然進まない。2011年11月に実施された大阪府知事大阪市長のW選挙は大阪都構想が大きな争点で、橋下氏の大阪維新の会が躍進したのでこれで前に進むはずだった。ところがその後も法定協議会で都構想に反対する会派が議論を進めさせないようにしている。都構想の賛否を市民に直接問うために計画の詳細を詰めなければいけないのに、いつまでも絞り込めない。それで妨害する議員を入れ替えるために選挙が必要だという理屈だ。

Q.10法定協議会において今まで通りの話し合いを続けていけないのか?

W選挙で公約した任期中に詳細設計図を示す為には、一案に絞り込むことがどうしても必要です。現在、法定協議会では協議の進展を明らかに妨害している委員が複数存在しており、民意の実現が危うくなっています。大阪都構想は、住民の皆様が決定するものです。住民の皆様にご判断いただくための詳細設計図づくりを妨害するのは、明らかにやりすぎです。

http://www.oneosaka.jp/tokoso/q-and-a2.html

そのことがあんまり周知されていないように思ったので、先日の街頭演説で私は橋下氏に直接質問して回答してもらった。

▲私が見に行った難波パークスでの街頭演説の映像。56分20秒頃から私が質問に立っている。マイクをすぐ返してしまったので二言目、三言目が言えなかった。


橋下徹に注目する理由

私は大阪の有権者ではないが、橋下氏が知事になったときから注目して見ている。それは彼がやろうとしている行政の無駄を削減して、福祉や教育、経済など、必要な場所に振り向けるという当たり前のことが実現できれば、全国の他の自治体でも手本になるからだ。外郭団体への天下りや、随意契約、経営意識のない自治体施設の非効率な運営。そういう長年放置されてきた役所の仕事を、大きく変える流れを作るかもしれないと思っているからだ。


*1:当初「220万人」と誤って書いていました。訂正します。