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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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参院選に出馬を表明した渡邊美樹氏から株主に送付された手紙 渡邊美樹という人物について

政治 法律

今週、ワタミ株式会社取締役会長の渡邉美樹氏から同社の株主に宛てて一通の封筒が送付された。「ワタミ株式会社株主の皆様へ」と題された両面印刷の紙一枚で、同氏が「自民党の全国比例代表候補として公認されました。」と報告し、2011年の都知事選に出馬し敗れたこと、安倍総理からの誘いもあり、新たな挑戦を決断したと、出馬への経緯を書いている。一応、締めくくりとして非常勤の取締役会長となることが書かれワタミグループ株主への報告という体制をとっている。ワタミ株式会社の封筒で送られ、社のロゴも入っているが、氏の署名が大きく入り、通常のIR(投資家向け情報開示)というよりは、選挙出馬の挨拶状の態であるという印象を受ける。この手紙は「ご関係者限り」とされ、3月末時点の株主名簿を元に送られたと思われるが、ワタミグループの介護施設利用者等にも同様の手紙が送られているようである。


この手紙が送られてきたことを書いたtwitter利用者のつぶやきが広まり、ブラック企業の経営者として連日話題を集める氏が今度は公職選挙法違反かと、はてブでも話題になった。


確かに選挙告示前の事前運動、あるいは公職選挙法で認められていない法定外の文書図画の頒布にあたるのではないかという疑念が生じる。はてブを見ると、即座に法律違反だと断定し糾弾するものや、実物を見てみないと(twitterのつぶやきだけでは)信用できない等のコメントがついているが、個人的にはいささか早計だなあと思う。私もコメントを付けたのだが、ほとんど誰も見ていないようである。

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3月までワタミ株持ってた。一応、非常勤取締役になるという報告を入れているけど、IRというよりは個人名義で選挙に出るという挨拶状の態。ちなみに前回都知事選のときも送ってきて問題にならんのかと思ったが。


私の手元にある問題の手紙の実物がこれである。



この手紙が公職選挙法違反に当たるのかというと、

  • 自民党の公認を受けたことや安倍総理の名前も出しかなり詳細に書いており出馬の挨拶状と言える。
  • ただし具体的にどの選挙に出馬するか名前は挙げていない。
  • 単なる決意表明であり直接同氏への投票を呼びかけるものではないから、選挙運動ではなく政治活動。
  • 同種の手紙は先の都知事選の際にも同様に送られてきたが大きな問題にはならなかった。

という点からギリギリで法の要件を免れるのではないかとは思うし、それなりに調べて周到にやっているだろうとも思う。ただし私は法解釈を厳密に判断することはできないから詳しい方が選管や警察に連絡されてみてはいいのではないかと思う。

また、社の活動とは関係ない氏個人の政治活動に株主名簿を利用するのは、目的外使用でありコンプライアンスに違反するのではないかという指摘もある。

この手紙をここに出すにあたっては、私信の公開や、著作権の絡みから、検討を要したが、国会議員に立候補しようとする公人でありその行為は国民の適切な審判を受けるべきであること、報道・批判・研究を目的とした引用であることから、ここに公開する。


渡邊美樹という人物について

渡邊美樹氏の経営する居酒屋チェーン、ワタミでは、社員に過酷な時間外労働や研修を強いて自殺者を出している問題*1や、これまでの語録からパワハラにあたるものが非常に多い点、氏自らブラック企業ではないと主張して書いたblog記事による残業時間が労働基準法に違反するものであること*2、社内資料に「365日、24時間死ぬまで働け」と書かれていると週刊誌に出る*3等、問題のオンパレードで話題に事欠かない。


ちなみに氏の語録にこういうのがある。

「よく『それは無理です』って最近の若い人達は言いますけど、たとえ無理なことだろうと、鼻血を出そうがブッ倒れようが、無理矢理にでも一週間やらせれば、それは無理じゃなくなるんです」「そこでやめてしまうから『無理』になってしまうんです。全力で走らせて、それを一週間続けさせれば、それは『無理』じゃなくなるんです」
渡邉美樹

意味的にはよく似た言葉を経営の神様と呼ばれる人が言っているのだが、こうして比較してみると渡邊氏のは随分と脅迫的で穏やかじゃない。内容的には似たり寄ったりだと思うのだが、渡邊氏の場合にあるのは人を死の淵まで追い込むような恐さだ。

『失敗したところでやめてしまうから失敗になる。
成功するところまで続ければ、それは成功になる』
松下幸之助


氏は佐川急便のセールスドライバーとして開業資金を貯め、居酒屋つぼ八フランチャイズオーナーとして事業を始め、1992年ワタミとして独立した。主力事業である「和民」は全国に拡大。2004年には介護事業に参入。2008年には長崎の食材宅配会社を買収し宅食事業としている。25年3月期の連結売上高は1577億円。純利益は35億円。カンボジアへの教育支援など社会貢献事業も多く手がける。


2011年2月の都知事選出馬にあたって代表取締役の座を後任に譲ってから、最近はどうもワタミ創業者という肩書きを好んで使い、自らの神格化に余念がないと見える。昨年末に全国の店舗を回り従業員と触れ合いメッセージカードを配るという「ありがとうツアー」を敢行。両国国技館で開かれる同社の株主総会は2010年から2部構成で午後はその名もワタミ感謝祭「ありがとうをつなぐ日」。*4講演やラジオのレギュラー番組も多数こなし、ワタミ本社のギャラリー「ワタミ夢ストリート」では氏の創業からの歴史が追体験できるようにセールスドライバーとしてトラックを運転する氏のマネキンが展示・再現されている。理事長を務める学校法人郁文館夢学園には肖像が掲げられている。

ありがとうを言ってもらえるような仕事をするという、それ自体はいいものだとは思うが、アルバイト一人一人に会長が会いに行ったところで「ありがとう」というようなポジティブな言葉意外に何か言えるような空気でないだろうことは想像に難くない。



私自身は実は二十歳そこそこの頃に氏の手帳管理術の本を読んで、傾倒した口なのである。(参考までに上げますが、買わなくていいです。)目標を達成するために具体的な日付を設定するとか、緊急なことかどうかで優先順位を付けるとか、書いてあることはとても有意義だ。(「7つの習慣」のフランクリン・コヴィーとか、手帳管理術の本には大体同じようなことが書いてあって、真理だと思う。)ちなみにこの本には、ワタミをグループ売上高1兆円にすることが目標と書かれている。後書きには2020年、60歳で引退するとも。

和民は比較的安い居酒屋チェーンの中では味が良かったし、自社で有機農場も持っているし、介護や宅食事業など将来性のある分野にも積極的であった。そんなこともあって私は2009年からワタミの株主であった。(株を始めて見たものの面倒になって最近まで全ての株を数年間一切売買していなかったのだけど。)しかし、社員を酷使している実態を知ってからは支持できない。


渡邊美樹氏自身はきっと優秀な人物なんだろうと思う。目標を設定し厳しく自己管理し達成に向けて追求していける人なんだと思う。だが人を使う立場として振る舞いがふさわしいかは別問題だ。企業が競争力のある人材を育てる上で厳しい課題を与えたり、リーダーシップのとれる人物を選抜していくのは必要なことだと言えよう。過酷な課題を与えても優秀な(気力・体力のある)人物は生き残れる。だがそこに残れなかった大部分の人から養分を吸い取っていくような集団は、倫理的に悪だと言わなくてはいけない。



最近私はことあるごとに言うのだが、知力、体力、コミュニケーション能力、容姿、人を寄せ付ける魅力、人間が生きていく上で、生まれもった能力の差がある。成功者がいい思いを出来るのは、本人の努力だけじゃなくて、運やそれらの積み重ねによる。辛辣な言い方をすれば、有能な人がお金を稼げるのは、愚かな人間が愚かな金の使い方をするからだ。そしてそれらは本人の努力ではどうしようもない部分がある。税と国家権力による富の再分配が正当化されるのは、そういう背景があるからだ。

古今、英雄や権力者、経営者などとして名を馳せた人物は、周りがいつ寝ているのかと怪しむくらい精力的に働き、成果を残すものだ。だがそれは恵まれた体力や集中力を持った一部の有能な人にだけできること。同じことを凡人が真似すると倒れる。

時間は一日24時間、誰だって平等だと言われるようなことがあるけど、私はそれすら疑っている。なぜなら人によって生まれつき体力や寿命に差があるように、最低限必要な睡眠時間が違う。8時間寝ないと、うとうとしてしまったり、判断力が鈍ったりしてしまう人と、4時間寝ればなんとかなる人では使える時間が違う。凄まじい集中力で仕事をして、移動時間とかのわずかな合間をぬって休みをとって、そういう人を見てきたから、すごく身を削って努力をしているのはわかる。でも世の中には人並みにやろうと思ってもできない人が結構いるのだ。

有能な人物は、自分ができるもんだからそれが当たり前だと思って、できない人は努力が足りないとか、やらないだけだとか、そういう評価を周りの人にすることがある。人の限界は結構個人差が大きいのだ。有能な人物がそのことをわからないで社会制度を設計すると不幸なことになる。だから渡邊美樹さん、あなたが政治家になって社会を変えるというようなことは止めてください。