私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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24-TWENTY FOUR-の全シリーズを見終わった。ここまでハマった理由。

正月休みの間に遂に、ドラマTWENTY FOURの全話を見終わった。ご存知、アメリカの架空の連邦捜査機関であるテロ対策ユニットCTUの捜査官であるジャック・バウアーの活躍を描いたドラマだ。ある一日(24時間)のできごとが、放送上も実際と同じ24時間かけてリアルタイムで進行するという趣向も話題になった。大人気を博し続編に次ぐ続編、数々のパロディのネタにもなった。


▲このエントリはTWENTY FOURのテーマRemixをBGMにお読みください。


シーズン1から8までと7の前章にあたる「リデンプション」。1シーズンは1話1時間(実際にはCM部分を除いた約45分)×24話、×8シーズン、特典のコメンタリーが収録されている話もあるので実際にはもっとだ。DVDで見始めてから足かけ2年。いやー、長かった。実は1だけは何年か前に見たことがあったのだが、2011年の4月からテレビ東京でシーズン5が放送されたのが俺の中での再燃のきっかけだ。このときは本当はシーズンファイナル(8)を放送する予定で、それまで地上波で放送していたフジテレビに代わって権利を獲得していたらしいのだが、ファイナルの内容がテロリストが核燃料棒をテロ攻撃に使うという内容で、原発災害後の時期的にあまりにもあれなので差し替えになったらしい。個人的には先にファイナルを見ないで済むことになったので良かった。


しかしこれだけ興奮と緊張が連続するドラマもない。続きが気になって麻薬のように止められなくなってしまった。8シーズン見終わった今はスッキリ、最後の締め方にも満足している。もうあそこまでいったらジャックが捜査官として普通に戻ってくるということは考えにくいだろうし、有終の美だろう。番外編で映画があるという話はその後たち消えになっているようだが、是非劇場で見たいと願っている。


なぜ私がこんなにもTWENTY FOURにハマることになったのか、その理由を書いていこうと思う。



ちなみにTWENTY FOURは現在全シリーズが、上の写真に写っているスリムボックスになって発売されている。24話収録されてamazonで三千円台で買えるのでビデオレンタルくらいの値段で楽しめる。今なら2BOX買うと1BOXもらえるキャンペーンもやっているので利用してみるといいと思う。

SEASON7

このシーズンでは遂にホワイトハウスにテロリストが侵入する。これでもかという緊迫シーンの連続だが、まだまだ物語は24時間の中盤にもたどり着いていない。ひとつ問題が解決してほっとしたのもつかの間、新たな黒幕の出現に、まだ続くの!?という視聴者を休ませない展開は24の本領発揮。この興奮はこれまでのシリーズを通しても随一と言っていい。


昼間の明るい日差しの中、タイを締めたジャック・バウアーの登場は新鮮だ。舞台は首都ワシントンD.C.、過去の取り調べでの違法な拷問を問われ、公聴会に召喚されたのだ。解体されたCTUに代わり、捜査を主導するのはFBIのチーム。FBIは法令遵守への強いこだわりを持っており、ジャックと度々ぶつかる。ジャックとて、法を重視しないわけではない。しかし国家の安全保障の前に究極の選択を迫られ、そしてより被害の少ない方を、テロを阻止するのに使えるあらゆる手段を、着実に選んでいるのがジャックだ。そのために彼自身が犠牲にしているもの、家族や友人との繋がり、人間的な感情との狭間での葛藤。

これまでもシーズンを通して描かれてきた重要なテーマではあるが、今作ではこの葛藤がジャックと周りの人々とのやりとりを通してより色濃く写している。それはこのシーズンで最初から最後までジャックと並んで出てくる、女版ジャックとでも言うべきキャラクター、FBI捜査官ルネ・ウォーカーの言動の変化にもはっきりと見て取れる。究極の場面で人はどうすべきなのか、視聴者にもcontroversialな問いを突きつける。


今作に登場する女性大統領、アリソン・テイラーはデイヴィット・パーマーにも匹敵する強い意思を持った大統領だ。合衆国大統領という絶大な権力を持った立場で、家族をも失いかねない危機の中、憲法を遵守すると国民の前で誓った宣誓の重みを感じていく。

他にも、クロイ・オブライエン(vsジャニスも、見もの)、トニー・アルメイダビル・ブキャナンシークレットサービスのアーロン・ピアーズら名キャラクターの活躍にも目が離せない。本作の撮影中に起きた脚本家ストの産物と言える、特別編「Redemption」もストーリーに奥行きを与えている。





ただ、何のミスか、パッケージの裏側に印刷されているこのセリフ(これまでの自分を見つめ直したジャックが静かに友人に語る印象的なものだ)だが、[ I would have that ]が余分だよね?

TWENTY FOURの魅力

ドラマTWENTYFOURに私がここまでハマったのは、ルールやシステムで制御しきれない、人間の不完全さをこうして綺麗事にせず見せているからだと思う。もちろんエンターテイメント作品として、爆発やアクションの派手さ、かっこよさもある。個人的には、(CTUは架空の組織だが)アメリカの警察や軍隊、政府の組織や政治の世界(ホワイトハウス、閣僚、シークレットサービス国土安全保障省国防総省、司法省、自治警察や州兵、NSA、FBIなど)をリアルに描いていて面白いというのも大きい。だがそれだけではここまで熱心に見続けることはなかった。

私は、人間が平和的で繁栄的な社会を作るのに、法と官僚的(軍隊的)統治機構は必須だと思っている。だがそれで全てがうまくいくと考えるのは甘い。強大な力を持って暴走するものが出てきたとき、法で抑えることができないとき、暴力的な手段、拷問によって犯人から情報を引き出さなければ解決できないことがあるかもしれない。

だがそのような手段で難を逃れたとしても、決してそれは正義のヒーローではない。国家のために身を捧げても、受けるのは賞賛ではなく、法を犯したことへの痛いペナルティ。報われないが、そうあるべきだと思う。究極の場面では、公的な態度と、個人的な称賛とが矛盾することはありえる。汚れ役だが誰かがやらなくてはならない。それでも自分を犠牲にして尽くすことができるか、それはジャックのような強い意思を持った人間にしかできないことだと思う。過激な拷問シーンが批判されることもあるようだが、決して拷問を肯定するようには描いていないと思う。

TWENTY FOURは常に、究極の選択を迫られる状況で視聴者に自分だったらどうするかという問題を提起する。人によって答えは違うだろうし、それはその人が何を正しいとするかを問うことである。正義とは何か、多数を救うために少数を犠牲にすることは、国家による監視は、拷問は許されるのか、政治哲学的なテーマを含んでいると思う。

シリーズを通しての変遷

このドラマがアメリカで911テロ直後の2001年11月から放送を開始している点も驚きだが、このドラマの脚本家陣は素晴らしく先見の明がある。というか技術的なことから政治の内情のことまでよく調べているのだなあと思う。アメリカ史上初の黒人大統領デイビット・パーマーはオバマに先行して登場したし、現実世界での女性大統領の誕生も予告している。

CTUお得意の衛星監視装置は、実際にドラマのようなスピードでは使えないらしいが同じようなものが存在するらしいし、シーズン8ではさらに進化してdrone(ドローン/無人偵察攻撃機)までがニューヨークの上空を徘徊している。イラク戦争で実際に使われた兵器だ。

CTUの設備はどんどんハイテク化されていき、シーズン8でリニュアールされたCTU支部は、巨大なモニター画面が壁を埋めていて、個人のワークステーションはモニターがガラス机の下に埋め込まれていた。あれって使いやすいんだろうか?尋問室のドアなんかは上に開くし、白い壁が光を放っていて宇宙基地のような未来感のある造りだった。そういう点ではCTUが登場しなかったシーズン7の、パーテーションで仕切られたいかにも現代的なオフィスといった感じのFBIのオフィスは異色であった。

シーズン7では、民間軍事会社というものにスポットが当たったが、アメリカには現在こうした多数の軍事会社があり、戦地への派遣や物資の調達をアウトソーシングされているらしい。広大な敷地に基地を作り組織化された傭兵を雇い、FBI等の法執行機関の捜査にも力ずくで抵抗しようとするとしたら、これは国家にとって脅威で矛盾をはらんでいるなあと頭を抱えそうな問題だ。



ドラマの中で使われている小道具にも目がいく。MacDellのコンピュータ、携帯電話は当然何度も登場したが、意外にもiPhoneが使われているシーンはなかったように思う。あまり車には詳しくないが、フォードやハマーに混じってトヨタ車も登場。シーズン8ではホンダのインサイトも出てきた。シーズン7では、ヒュンダイの車のコンソールパネルにUSBメモリを読ませて音声ファイルを再生するという使われ方が重要な場面であって、市販車だと思うがそんな機能まであるのかと驚いた。ストーリーの展開上、車を盗むシーンがよくあるが、配線を繋いでエンジン直結してという手法は古い型の車でしか使えないので、最近の車を使うときは運転者のいる車を奪うようにするというような脚本の工夫もコメンタリーで誰かが喋っていた。テレビ会議システムを使う場面では前後にシスコシステムズのロゴが写ることがあるが、あれは番組への技術的協力への謝辞だそうだ。巧妙なCMだ。そういえば確かシーズン7に登場した飛行機がアメリカの架空の航空会社の塗装になっていたが、あるカットで頭の部分だけを撮っていたがスターアライアンスのロゴが入っていて、たぶんANAの機体だったんじゃないかと思う。再び見るときは(その時間を作るのが大変だが)そんなところも観察しながら見てみたい。



全シリーズのあらすじは以下のFOX公式サイトで見られる。最近、10周年記念コンプリートボックス(DVD105枚組!)も発売されたので今から見始める勇気のある方は挑戦してみてはどうか(笑)