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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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独学で日本語教育能力検定に受かる勉強法

言語・語学

(5/19大幅加筆しました!)

去年(2011年)、日本語教育能力検定試験に合格した。いわゆる日本語教師の試験。取得しようとした動機は、英語や韓国語・中国語などを少しかじり語学への関心が高まったこと、相対的に日本語や言語学についても深く理解しておきたいと思ったこと、日本人として日本語を体系的に説明できるようになっておきたかったこと、試験の概要とテキストを見たら非常に興味のあることばかりで勉強するのが面白そうだったこと、この年の前半は鬱病で何もできずにいたのでリハビリがてらの勉強と何か成果が欲しかったこと、などだ。

試験のカバーしている領域は一般言語学から教育学、心理学や比較文化日本語教育の歴史と幅広く、試験勉強は実に面白かった。音声学(試験ではリスニングもある)では、口(舌)の使い方をかなり意識することになり日本語の発声はもとより英語やその他の言語を学習する際にもこの知識は役立つ。ただ僕の精神面が思わしくなく、締め切り間近に出願してから勉強を始めたのに、1か月もテキストを開かなかない期間があって勉強時間は明らかに不足していて、試験では筆記(小論文)の手応えが全く感じられず、こりゃダメだと思い自己採点もせずに放っておいた。だが、どうしたことか合格通知が届いてしまった。メインのテキストを勉強していた時間は手元の記録によれば計50時間にも満たず、これで受かってしまって申し訳ないような気もするのだが、選んだテキストがなかなか要点を掴んでいたのと自身のこの分野への興味関心がプラスに働いたのだろう。

受かったからと言って日本語教師として教えるスキルがあるかは別問題なのだが、少なくとも資格試験に受かる知識のインプットはできたということなので、これから自らの復習のためにその一部をアウトプットすると共に、勉強法を紹介していこうと思う。日本語講師としてのキャリアパスを具体的に模索している方にはさらに情報を集めていただく必要があると思うが、ひとまず何かの足がかりに資格を取得したい、どうしても独学で合格したいと考えている方にはこの記事の記述は大いに参考にしていただけるのではないかと思う。

僕の身近にこの資格に興味を示している人が何人かいて、彼女たちに参考にしてもらうためにもまとめておこうと思っていた。大変遅くなりましたがご覧頂ければと。

日本語教育能力検定とはどんな試験か

日本語教育能力検定試験は、財団法人日本国際教育支援協会が主催する、日本語を母語としない人を対象とした日本語教育の専門家として基礎的水準に達しているかを検定する試験。日本語教育学会が認定している。試験は10月の第三日曜日に行われる。

試験は3部構成。

試験?(90分、100点)
出題範囲の区分ごとに出題され、基礎的分析的知識・能力を問う。大問15問。全問マークシート方式。
試験?(30分、40点)
聴解を含み音声に関する知識・能力を問う。大問6問。全問マークシート方式。音声を聞いて解答していく。試験??・??と比べ時間は短いが配点率は高い。
試験?(120分、100点)
日本語教師としての総合的な実践力を問う。大問16問。マークシート方式と一部記述式。覚えた知識を活用し、考えて解答する問題が出題される。最後の1問が記述式問題で、配点が高いと考えられる。

Wikipediaより

出題範囲は以下の通り。

1 社会・文化・地域
1、世界と日本
2、異文化接触
3、日本語教育の歴史と現状
4、日本語教員の資質・能力


2 言語と社会
1、言語と社会の関係
2、言語使用と社会
3、異文化コミュニケーションと社会


3 言語と心理
1、言語理解の過程
2、言語習得・発達
3、異文化理解と心理


4 言語と教育
1、言語教育法・実技(実習)
2、異文化間教育・コミュニケーション教育
3、言語教育と情報


5 言語一般
1、言語の構造一般
2、日本語の構造
3、コミュニケーション能力


日本国際教育支援協会公式サイトから抜粋。


平成23年度(去年)から400字の記述問題が導入される等、出題形式の改訂が行われた。2010年は、応募者数6,823人、受験者数5,616人、合格者数1,197人。合格率は21.3%。それに対し2011年は、7,034人、5,732人、1,527人、合格率は26.6%だったので、やや甘めだったのかもしれない。


日本語が話せるからと言って当然に合格できるような試験ではなく、上で示したように幅広い範囲の知識が必要となる。日本人が当たり前に使っていて気付かないような日本語の文法法則の疑問に論理的に答えられなければいけないし、外国の言語との構造の違いを知ることは日本語学習者の犯し易い間違いの対策に役立つ。言語や教授法、テストの作成等はまだ実際の日本語教育に直結しているので必須と思うが、教育学や心理学のテクニカルターム等はどこまで覚えればいいのか、テキスト1冊やってもそれで全てというものではないし、どこから出るのかわからない、旅行管理者試験の地理分野のような終わりの見えなさがある。


小中高校の教員と違って、法で定められた国家試験ではないので、日本語教師になるためにこの試験の合格が絶対というわけではないが、文科省の出す指針の中で、日本語教育施設の教員の資格の基準の一つとして上げられている。*1

日本語教師として採用されるためには、一般的には、大学で日本語教育を専攻するか、420時間の日本語教師養成講座を受講するか、この試験に受かるか、のどれかが必要とされているようだが、この試験は十分独学が可能だ。旅行業務取扱主任者、簿記、宅建主任者、シスアド、なども独学で取得してきた私から見ると、それらの資格予備校に高いお金を払って時間を費やすのが、費用、効率性の面から賢いとは思えない。ただ、養成講座を開いている語学学校の中には、グループ校への採用を斡旋しているところもあるのでそうしたコネクションを作れるのが売りなのかもしれない。また日本語教師の仕事はただ知識があるだけでは不十分で、実際に生徒に教えるためのスキルや、教案・カリキュラムの作成といった能力を要求されるので、face-to-faceでそれらを学ぶ機会があるならば受講する価値はあるだろう。

この試験の「日本語教育の歴史と現状」という項目で学ぶことにもなるのだが、国内の日本語教員の総数はこの10年で1.5倍に増加。近年は約3万人で推移しているが勤務形態別では常勤:非常勤:ボランティアの比率が、およそ1:2:3となっていて、大半を非常勤とボランティアに頼っている。日本に来る日本語学習者の数は政府の留学生受け入れ計画等で増えていて2009年はおよそ17万人。高等教育機関(大学・大学院)で学ぶ者は10年前の3倍に増えているが、それでも全体の3分の2は日本語学校やボランティア教室等が担っている。*2

私がやや躁状態の時に日本語教師として働いてみようかと思って、実際いくつかの語学学校に採用の予定があるか電話で問い合わせてみたのだが、空きが出ないと募集しないので定期的に採用はない、育成に時間がかかるので長く働ける人でないと採用できない、震災の後来日する外国人生徒が減った、ということを聞かせてくれた。

日本に来る留学生が受けなければいけないのは、日本語能力試験(日本語を母語としない人の日本語能力をN1-N5の5段階で認定する試験)だが、日本語教師になった人の多くが学習者にこの試験の対策を教えることになるのでこの試験の概要についても把握しておく必要がある。去年の日本語教育能力検定試験の、試験Iの大問15では、日本語能力試験の実施団体や認定の目安を問う問題などが出題された。(そんなところを問うてくるとは思わず、とても単純な問題なのに私は落としてしまった!)




おすすめの参考書

(解説加えました。)

必須テキスト

独学で勉強する場合、どのテキストを選ぶかはとても重要な点だが、書店でいろいろ比較検討してみた結果、僕はヒューマンアカデミー編集のこの一冊をおすすめする。試験の内容が満遍なく網羅されていて、デザイン的にも見やすく最後までモチベーションを維持して読み通せそうだと判断した。音声・聴解用のCDもついている。僕はiPodに入れてスタバ等で勉強する時にも活用した。参考文献も大量にリストされているので特に興味のある分野はそこから掘り下げてみるといい。

昨年から試験の問題形式が改訂されたため、今年の試験に向けて出題された問題を反映した改訂版が出るのではないかと、実は読んでいたのだが、3月に発売された『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 合格問題集』で補強対応を図ったように見える。メインのテキストは変わらずこのままでいいだろう。(2014年2月、新版が発売されました。『日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第3版 (EXAMPRESS)』

褒めてばかりいて疑われてもいけないが、あえて注意点を述べるとすれば、このテキストの特に日本語の構造・文法体系についての解説は、ある程度基礎知識のある人を前提にしているように感じる。僕は義務教育で習った文法なども思い出しながら学習した。いわゆる学校文法と日本語教育用の文法は少し違うのでその点にも注意が必要だが、一度見てみて自分が学習するのにさらに別の参考書が必要かどうか判断して欲しい。

このテキストを通読してどう考えても理解できないところがなかったのならば一応試験に耐えられる知識はあると思う。あとはどう積み増すか。詳しいことはまた記事を改めて書きたいと思う。幸い関心のある読者からこの記事に多数のアクセスを頂き、リンクから購入くださった方もそれなりにいらっしゃるようなので、このテキストをどう使ったかについても参考にして頂けるようにしたい。

常用漢字表や送り仮名、敬語の指針、ローマ字・外来語の表記等、国が国語施策として出した告示等をまとめたもの。探せばweb上に公開されているものもあるが、価格も安く小さくて便利なので備えておくことをおすすめする。机の上に置いておき、メインテキストや問題を解いている時に、あやふやなところがでてきたら適宜必要な箇所を読んで繰り返し記憶の定着を図る使い方が良いだろう。後で紹介する『日本人の知らない日本語』の凪子先生も参考書として挙げていた。試験対策以外にも異字同訓や書き間違いやすい漢字の表などは社会人の常識として苦手な人は知っておくべきだし、子供の名付けに使える人名用漢字別表などは使えるかもしれない。個人的には公用文作成の要領、日本新聞協会の書き換え漢字等が面白い。

日本語教育検定に限らず、試験において実際の問題がそのまま収録された過去問に事前に触れておくことは大切だ。知識は定着していてもいざ本番で問題用紙を開いた途端、見たことのない形式に焦ってしまい実力を発揮できなかったり時間をロスしてしまうことがある。特に僕のように緊張しやすいタイプの人は、実際の問題形式やページ構成、ボリューム等を把握して、心の準備が出来ているだけで大分変わってくる。年に一度しか受けられない試験で失敗を次回の教訓にするには代償が大き過ぎる。もっとも僕は試験の前にあまりに時間が足りなくて前日に座って読める書店で一部だけ通読したのだが、読者は入念に準備をして望まれたい。

余裕があれば

日本語・語学についての軽い読み物など

勉強の息抜きやモチベーションを保つためにも、合間に日本語や言語に関する軽いエッセイや漫画等を読むのはいいだろう。書店でも売れているらしい『日本人の知らない日本語』シリーズで日本語学校の先生をイメージを膨らませてみるのもいい。語学オタクの夫を持つ小栗左多里のエッセイ漫画『ダーリンは外国人』シリーズからは『ダーリンの頭ン中 英語と語学』。楽しみながらちょいちょい知識も増える。

試験の勉強からはだんだん離れるが、webサイト「言語学のお散歩」を運営する博学な金川欣二教授の『おいしい日本語』はその豊富な引き出しから日本語に関する話題を滑るように巡っていく。"ベストセラーになっている『問題な日本語』には「『わたし的』『気持ち的』などの形で『的』を用いると、意味があいまいになり、聞き手に正しく伝わらないおそれがあります」となっているが、若者が「的」を使うのは、むしろ言葉をあいまいにしたいからで、正しく伝えようとは思っていないのである。"(同書p.4より)という指摘も面白い。言語とは通時的なものであり、言語学者が模範的な文法など定めても実用には勝らないのである。"Grammatical prescriptions cannot prevail against usage."とは、僕の使っている英単語帳『キーワード英単語・熟語2300』からの用例である。そうは言っても、一応誤用とされている日本語を無知で使っているのは恥ずかしいことなので『問題な日本語』シリーズは読んでおいて損はない。古い本は安く集められる。くれぐれも息抜きにのめり込みすぎないように。

勉強の仕方

さらに続きます。