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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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劇場版「チェブラーシカ」に見る不条理さの魅力

映像作品

ロシアの国民的人気キャラクター、チェブラーシカ。以前にロシア出身の英語講師から、日本に来たら電車の中で「僕チェブラーシカです」と日本語で喋っているので驚いたという話を聞いた。*1小熊のような謎の動物、ということだがかわいくて私は好きだ。

キャラクターはとてもかわいいのだが、ストーリがなんともシュールで一貫性なんかなくてその不条理さがたまらない。これぞロシアというべきか、ソ連での体制批判や社会風刺を織り込んで作られたという誕生の経緯があるとのことだが、ただかわいいだけじゃなく、登場人物に影のあるところがいい。

絵本を元に4本の人形アニメが制作され、2010年に日本で映画化された。(以下に思いっきりネタバレを含みます。)



チェブラーシカ」という名前はロシア語で「ばったり倒れ屋さん」という意味だそうで、オレンジの箱の中で発見された時あまりに眠くて何度起こしても倒れるからという理由で名付けられた。なんなんだその名付けは、カワイイじゃないか。

ワニのゲーナというキャラクターもイカしている。彼は動物園でワニとして働いている。毎日服を着て通勤して、閉園時間まで自ら檻の中に入るのだ。彼は孤独で友達がいなく一人でチェスをして遊ぶという暗さだが、友達募集のビラを作ってそこら中に貼りまくるというわけのわからない行動力を見せる。彼はビラを見てやってきたチェブラーシカたちとすぐに仲良くなっているし、親切だし、孤独な理由がよくわからないが、でも「孤独なのです」とナレーションに言わせるところがなかなか素敵じゃないか。サーカスの入り口で杓子定規に止められて、「ルールを破ることはいけないことだけど、破ってもいいときがあるような気がするよ」的なことを言う彼の発言は哲学的でとてもいいと思う。

もう一人、シャパクリャクばあさんという、周りにいじわるをするキャラクターが登場するのだが彼女の行動の突飛さが統合失調症的で面白い。サーカスに侵入して、綱渡りの少女に私の方がうまくできると妄想的な発言をして、勝手にやって失敗して逆ギレである。また別の場面では突然公園で悩み相談所を始めるのだが、相談者が悩みを言ってお金を払うと、なぜかタイプライターで、滅茶苦茶なアドバイスを書いて渡す。アドバイスのことを「それはもうやったよ」と言われて、私のアイデアを盗んだのか、キー!と取り乱すところなんか、統合失調症者が訴える思考盗聴、そのものじゃないか。



古今、寓話にはぶっ飛んだキャラクターが登場する。『不思議の国のアリス』のイカレ帽子屋などほとんどのキャラクターはまともな頭では理解不能だがとても魅力的だ。私はリアリティーのない、破綻した部分のある作り話(小説)が嫌いだが、ファンタジーはこれくらいぶっ飛んでいた方がいい。



現実社会で統合失調症者やマイノリティがどのように生きるかは難しい問題で、安易に意見を述べることは避ける。だが異質なものを排除して見えないようにする社会は、私は嫌悪する。社会には統合失調症的なものを受け入れる寛容さがあった方がいいのだ。世界には信じる神や正義が違う人々がいて、折り合いを付けて生きていかなくてはいけない。だから映画のラスト、シャパクリャクが、もう悪いことはしないと言って大団円は気に入らない。

*1:2009年にJR西日本のマナーアップキャンペーンのキャラクターに採用されている。