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私は何を知っているか?

Mark/まあく タイトルはミシェル・ド・モンテーニュ(1533~1592)の言葉 「Que sais-je?(私は何を知っているか?)」

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普通救急救命講習を受けた

医学・医療 消防・救急 法律 社会 大学


3年半ぶりに救命講習を受けた。(以前の記事は下部リンク参照)大学の授業で行われたもので、この後は上級コース、インストラクター養成コースへと続く。何度も復習して、手順はもう頭に入っているのだけど、いざ他者の見ている前で実践となると緊張して記憶が飛びかけるものだ。実際に遭遇したらなおのことと思うが、ひるまず動けるよう繰り返しやり体に覚えこましておくことが重要と思う。

特に最近以下のような記事を見ていたこともあり、自分がこの場にいたらどうだろうと危機感を強くしていた。群集の中で倒れる傷病者、遠巻きに眺める人々、衆人監視の中でCPRを実施、見世物を見ているようなコメントが漏れ、しまいには写メの音が飛び交う、これは相当なプレッシャーである。2番目に示した例では、BLS(一次救命処置)を行ったバイスタンダー(その場に居合わせた人)が後にPTSDを発症している。

こうしたことが起きる理由の一つには、日本ではBLSの教育を受けた一般人が十分でないことがあるのではないかと思う。最近では街中でAEDの表示を目にすることが多くなってきたが、一体どれほどの割合の人が適切な処置を行えるだろうか。上の例では、責任感や相手の心情を考える想像力の欠如は責められるべきと思うが、BLSの講習を受けた経験があればこうはならないのではないかとも思う。どう行動すべきか分からないから、下手に手出しするよりも傍観者側に回るという発想はある意味で分かりやすい。しかしBLSは簡単な手順で行える。講習を受けに行く時間が無いと言う人も、下にmovieを張っておくので是非見て欲しい。


一点。法学的に言えば、「善きサマリア人の法」*1と言う例で示される、立法処置の問題もある。BLSを行った人が失敗し、傷病者が死亡、又は後遺障害が残った場合にどう責任を問われるのかと言う問題である。一般的にはBLSにより障害を負わせたとしても免責されると言われていて、その根拠として以下の条文が引かれている。

民法第698条には緊急事務管理に関する規定があり、これによると、「管理者(義務なく他人のために事務の管理を始めた者)は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない」

刑法第 37条では、違法性阻却事由の一つである緊急避難に関する規定があり、「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない」

善きサマリア人の法 - Wikipedia

実際に胸骨圧迫心臓マッサージの実施によって肋骨を骨折させてしまうことがよくあるそうだが、命がなくなるよりはましなので躊躇無く行うようにと言われている。

だが現在日本においてAEDの使用、BLSの実施について特別定めた法律は存在しない。判例が出ているわけでもなく、既存の法を捻くりだして解釈している学説が有力であるというだけで、そういった意味では「善きサマリア人の法」が明文化されているとは言い難い。

この報告書の中でも、一般の人がたまたま救急現場に居合わせてAEDを使った場合には反復継続の意思がなく、医師法違反にはならないと書いてあります。そして「業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心停止者に対し応急の対応を行うことがあらかじめ想定される者(一定頻度者という略語を使う方がいますが、日本語として意味不明なのでやめたほうがいいと思います)」と表現されている救急隊員や消防隊員、警察官、警備員などは4つの条件を満たせば使っても違法にならないという「方針」が書かれています。「医師等による速やかな対応が困難」「対象者の意識、呼吸がない」「AEDの講習を受けている」「使うAEDが医療器具として認められている」。

この「検討会報告」が、一般市民がAEDを使うことができるようになったとされる唯一の根拠となっています。お分かりのように、厚生労働省という「行政」がだした「報告書」ですから、法律を曲げるような力は持っていませんし、「司法」が医師法を厳密に解釈して違法性を指摘した場合にはそちらが有効になります。

AEDと法律その他

ここで挙げられている報告書とは、2004年7月に出されたこれである。一般人でここまで意識する人はまずいないと思うが、一般人より責任が重いとされる医療従事者の場合、たまたま居合わせて行った処置がうまくいかなかった時には医療過誤訴訟に発展する恐れも高い。法的な免責が不十分なために医師が救命処置を躊躇うことがあるとすれば(実際にそのような結果が出ているアンケート調査がある*2)これは大いに問題ではないかと思う。



さて、今回の講習では、心臓マッサージ(略して「心マ」が馴染んでいたのだけど)という言い方が「胸骨圧迫」と言う言い方に変わっていた。心マの方が柔らかい感じがして覚えやすいと思うのだけど、どうなんだろう。これからもBLSに対しての意識を高くしておきたいと思う。